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    ブラッドリーの体調不良を増やしたくて書きました!

    ##ブラネロ
    ##体調不良
    ##まほやく

    ブラッドリーの古傷が痛む話「ネロ、美味しかったです!」
    「ありがとう、ネロ。」
    「おう、お粗末さん」
     食事を終えた面々が食器を片付けにやってきて、ネロに昼食の感想や感謝を伝えていく。みんな優しく、律儀なことだ。
     昼食後の昼下り。今日は朝から、どんよりと重たい雲が空を覆っている。外を見ると、ぽつぽつと雨が降り出していた。そういえば、夜にかけて本降りになるから外出を延期した、と食堂で誰かが話してたっけ。一通り片付けも終えて、食堂から人気がなくなっていく。

     まだ今日は、あいつの姿を見ていない。

     いつもなら朝食の匂いに誘われ起きてきて、昼食の準備中にもつまみ食いをしにやってきて、我先に昼食を終えたかと思えば人様のおやつを狙いに行く……とにかくいつも飯のある場所をチョロチョロしているあいつが、今日は一度も現れない。今朝は、またくしゃみで飛ばされたのかと思っていた。が、この空模様……窓枠をつたう雨を見て不安が募る。
     かつて、共に過ごした雨の日を思い出したネロは、それを追い払うように首を振った。
     そうだ。簡単に食べれる物を差し入れよう。くしゃみで飛んでったのであれば、誰かのおやつにすればいい。シノやカインが喜ぶだろう。
     ネロは無理矢理に気を取り直して、食材を確認するため冷蔵庫に向かった。

                *

     ブラッドリーには古傷が多い。それはもう、見ての通りだ。数々の死線をくぐり抜け刻まれた漢の勲章を、本人は誇りに思い大切にしているようだ。しかし、どんなに誇り高い勲章も、ただの古傷。天候の悪い日には鈍い痛みを伴い、最も条件の悪い日には激痛と発熱をもたらした。

     今日はまさに、その最悪な日だった。

     昨日の夜から鈍い痛みを感じていたため、ああ明日は雨か……と思いながら眠りについた。こんなのはよくあることだ。翌朝、目が覚めてからが最悪だった。
     明らかに発熱している。腹部の大きな傷が激しく痛みを訴えているのに加え、発熱のせいか頭痛や関節痛、それに若干の気分の悪さもある。ここまでの不調は久しぶりだ。
     とりあえず、痛み止めのシュガーを作り、バリバリと勢いよく噛み砕いていく。身体が自由に動かないと、どうしたって苛々して気分が塞ぐ。こういう日はベッドに転がってやり過ごすしか無い。昔からの付き合いだ、対処法には慣れている。隣に相棒がいた頃は、くだらない話で笑い合ったり、塞いだ気持ちに身を任せて甘えたりしながら、痛みを忘れて過ごしたものだが、それはもう昔の話だ。
     眠ってしまおう。痛みも過去も、感じないように。

                *

     ネロはブラッドリーの部屋の前に立っていた。いつもより強力な結界が張られている。ということは、中に家主がいるのだろう。
     周りに誰もいないことを確認してから、扉をノックする。少し待ってみたが返事がなかった。いよいよ予感が的中したのだろうと確信する。
     ブラッドリーの結界を抜けるのは簡単だ、何も考えずとも手が覚えている。ネロは、慣れた手つきで扉を開けると、静かに一歩中へ入り、再び結界をかけ直した。

                *

     あたたかい。それに、いい匂いがする。

    「……腹減った」
     ネロが俺を覗き込むように見下ろしていた。俺の言葉を聞いたネロは、驚いたように数回瞬きする。そして、盛大に吹き出した。
    「目ぇ覚めて、一言目がそれかよ。ったく、変わんねぇな。」
     ネロの機嫌が良さそうで何よりだと思った。ネロの顔を見ていると、本格的に腹が減ってきた。匂いのもとを目で探すと、サイドテーブルに湯気が立っているリゾットが置いてある。
    「それな、鶏を裂いたのとレモンでサッパリめに作ってあるから、食える分だけでも食えよ。」
    「おう。」
     流石、分かってる。今朝は気分が悪く食欲なんか一切なかったのに、今は目の前のリゾットが食いたくてたまらない。つられるように、今までの体調を思い出してきた。
     周りを見渡して、自分の状態を確認する。まだ若干熱はあるようだが、痛みはだいぶ引いている。いつの間にか毛布が掛けられている。きっと、ネロが用意してくれたのだろう。毛布の上からネロが俺の腹をさすっている。昔も……こうして、隣で痛みを和らげてくれた。

    「起きれるか?」
     ネロがそう言いながらリゾットに手を伸ばすので、咄嗟にその手を引き止めた。まだ離れてほしくなかった。
    「……。……自分で食える。」
     腹をさする手を続けて欲しい、とは言えなかった。その代わりに、身体を起こしリゾットを手に取る。ネロは何も言わずに、再び俺の身体に手を戻した。
     リゾットは温かく、そして美味しかった。出汁がよく効いていて香り高く、レモンと薄味の塩気で整えられたシンプルな味付けで、スルスルと腹の中に収まっていく。
    「うまい!」
    「どうも」
     ネロが隣で微笑んでいた。腹の中にはリゾットが、外にはネロの手が……痛みをあげる古傷を温めている。
     なんだか、すっかり元気になった気がする。今朝の不調が嘘のように爽やかな気分だ。今日の夕飯は何だろう…朝と昼を食べそこねたから、夜はフライドチキンがいいな。一応ネロにその希望を伝えたところ、さっきまで丁寧に腹を撫でていた手で、盛大に頭を引っ叩かれた。

     ったく、おっかねえなぁ。
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