大学生 高校卒業後、瑛くんとわたしは一流大学に進学した。高校の頃から変わらず一緒にいるけれど、大学生になって変わったことも色々ある。
「瑛くん!」
講義が終わり、瑛くんに声をかける。
「ああ、おまえか……」
瑛くんはノートを急いで書き上げて、一緒に講義室を出た。今日は経営学の講義だったから、真剣にノート取ってたのかな。大学に入学してから、瑛くんは経営の勉強と資格を取ることにはまっている。
「ごめんね、急がせちゃって」
「いいって。ちょうど書き終わるとこだったから」
「でも、瑛くん、前と違って楽しそうに勉強してたし……」
店を続けるために勉強していた高校のときとは違う。今は夢のために楽しそうに勉強している様子が分かるから。なんて言ったら、チョップが飛んできた。でも、全然痛くない……?
「そういうことは分かってても口にするな」
と、瑛くんは照れた顔で言う。瑛くんのそんな表情も見られたし、良しとしようかな。
「ほら、行くぞ」
瑛くんはわたしの手を取って歩き出す。
「うん!」
こんなふうに学校の中でも手を繋げるようになったのも大学に入学してからで嬉しい。
二人で一緒に大学を出る。高校のときの下校よりも寄り道できるようになって楽しい。
「……っと、もうこんな時間か」
気が付くと、辺りは暗くなっていた。二人の時間は楽しくてあっと言う間に過ぎてしまうけど……。
「家まで送るから」
と、家の方角に歩き始めた瑛くんを引き戻した。
「あのね……今日、もうちょっと一緒にいられるの。だから……」
もっと瑛くんと一緒にいたい。すると、瑛くんは、
「……じゃあ、俺の部屋、来ないか?」
大学に入ってから初めて部屋に誘ってくれた。
「うん!」
大学生になって変わったこと。好きな人と長く一緒にいられるようになったこと。