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    takami180

    PROGRESSたぶん長編になる曦澄その1
    閉関中の兄上の話。
     穏やかな笑みがあった。
     二哥、と呼ぶ声があった。
     優美に供手する姿があった。

     藍曦臣はゆっくりとまぶたを持ち上げた。
     窓からは午後の光が差し込んで、膝の上に落ちている。眼裏に映った姿はどこにもなく、ただ、茣蓙の青が鮮やかだ。
     閉閑して一年が過ぎた。
     今に至っても夢に見る。己の執着もなかなかのものよと自嘲する。
     優しい人だった。常に謙虚で、義兄二人を立て、立場を誇ることのない人だった。大事な、義弟だった。
     毎晩、目をつむるたびに彼の姿を思い出す。瞑想をしたところで、幻影は消えるどころか夢へといざなう。
     誘われるままについて行けたら、この苦悩は消え去ってくれるだろうか。あの時のように、「一緒に」とただ一言、言ってくれたら。
    「兄上」
     締め切ったままの戸を叩く音がした。
     藍曦臣は短く息を吐いた。
    「兄上」
    「どうかしたかい」
     弟に応えて言う。
     以前、同じようにして藍忘機に呼びかけられても、どうにも答える気になれなかった時があった。そのとき弟は一時もの間、兄上と呼び続けた。それから、藍曦臣は弟にだけは必ず返事をするように心がけている。
    「江宗主より、おみやげに西 3801

    takami180

    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337