人々は与えられた物を当たり前のものとして受け入れ生きていく。それがどれほど恵まれたことかなど考えることも無く。かく言う俺も、その人々の一部に過ぎない。
いつもと変わらない喧騒の中。その片隅で小競り合いをする馬鹿共がいるのもいつもの事で、そんなのは気にも止めやしないのに、この日は何故かその数人の集まりが気になってしまった。若い男数人に囲まれる白い男。比喩でも何でもなく、見たまんま真っ白い男だった。頭髪が白で目立つのもそうだろうが、その男は白いパーカーに色あせて薄水色になったジーンズ、大きな白いトートバッグを肩から下げマスクをしていて頭から足先にかけ、身につけてる物のほとんどが白くざわざわと忙しなく行き交う人々の中でも一際目立っていた。
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