共闘「共闘が見てみたい相手?
そうだなあ、個人的にはマレウスとイデアかな。
機械音痴だけど魔法では右に出る者のいないマレウスと、魔法に力注ぐ気力はないけど魔導工学では随一のイデア。
正反対の性質でお互いに補い合って淡々と連携しそうで、面白い組み合わせだと思わないか?」
エースとデュースの所に遊びに来た監督生へのもてなしにと、紅茶とお手製のレモンタルトを差し入れてくれたトレイに、三人で話していた話題を振ってみた。
―――……タルトを切り分けてくれるトレイ先輩の背後に心なしか後光が見えます……ただし気のせいか黒いやつが。
「出たっ、トレイ先輩の冷静分析に見せかけてさらっとディスってくる辛口評価!」
「おいおい、人聞きの悪い。」
―――……あ、やっぱエースもそう思うってか口に出しちゃうんだ……。トレイ先輩、苦笑しながら一切れのタルトが小さめに切られているのは、多分エースの分ってことだよね?
雉も鳴かずば撃たれまいに、わざわざ口に出してしまうのは、含みも裏表もないと言えば長所なのだろうけど、今は短所一直線だ。
「あ、でも、確かマレウス先輩がデュオ魔法使うの、イデア先輩とだけですよね?
実は相当気が合うとか?」
「普段あまり接点はないはずだけど、そう言えばそうだなー。」
「接点はドラコーンくんがあるから、マレウス先輩はイデア先輩に好意的だと思うけど。」
「イデア先輩の方は全方面に……だからなぁ。」
「あー、あれはね、マレウスくんの絶大過ぎる上に感覚任せの魔法に合わせるだけの補助演算能力出せるのが、今のところイデアくんだけだからだよ。
リリアちゃんは合わせられるんだろうけど、デュオに合わせるより本人達がそれぞれ殲滅していく方が早いから見かけないんじゃないかな?
多分レオナくんとかも本気出せば余裕で合わせちゃうんだろうけど、なにせあの二人だから成立してないってか試しもしないだーけ。」
「あ、ケイト先輩。」
やっほーとにこにこ会話に混ざりに来たケイトが、さすが情報通の三年生、内情を教えてくれる。
「あー、わかるかも。
イデア先輩にデュオの補助お願いすると、すっごいラクなんですよ。エースと組むより断然。」
「お? 何だ? デューステメェ、もう補助してやんねーぞ?」
「上等だ。俺も無視してやっから一人でスカってろ。」
「デュース口調口調。紅茶冷める前に頂いちゃおうよ。」
ワルスイッチの入りかけるデュースを監督生が宥め、紅茶とタルトに誘導すると、デュースがハッとした表情になって、落ち着くためにカップに手を伸ばす。
「ケイトは何味で食べたい?」
「あはっ、お手数おかけしまーす。
せっかくだから、そのまんまレモンタルトで、甘さだけ思いっきり控えてくれると嬉しいかな。」
「了解。」
さらっとユニークを発動して、流行りのスイーツとかが好きそうな印象に反して甘い物の苦手なケイトのレモンタルトだけ甘みを抑えてくれるトレイは、やはり基本的には面倒見の良い優しい人だ。
「それで、お前達は誰と誰の組み合わせの共闘が見てみたいんだ?」
話題を戻し、トレイが一年生三人に問い掛ける。
「そりゃもう、なんと言っても『あの二人』でしょう。
この学園の最大戦力の二人にして、絶対共闘しなさそうな二人。」
「レオナとマレウスか。」
「僕は寮長とヴィル先輩かな。とてもお手本になる共闘を見せて頂けそうなので。」
「監督生ちゃんは?」
「僕はルーク先輩とラギー先輩かな。
あの人達の笑顔で獲物を追い詰めて狩るとこ、怖い物見たさって感じで。」
「笑顔でって言ったらオクタヴィネルの三人組じゃないか?」
「あそこは、いつも共闘っていうか共謀してるじゃないですかー。」
「確かに。」
「ケイト先輩は?」
「んー。オレちゃんは、撮影許可出してくれるならヴィルくんとマレウスくんなんだけど、撮らせてくれなさそうだから、レオナくんとイデアくんかな。
マレウスくんとは別の意味で共闘が成立しなさそうだけどね。」
「あー、イデア先輩が味方にビビりまくってまともに動けない説!」
「イデアくんがしゃんとして、レオナくんも普段ならダルいって言って出さない本気出すような場面なら、多分エッグい共闘になると思うんだよね。
レオナくん魔法力も技巧も高い上に策謀も機械への造詣も深いから、イデアくんの技術力を活かしつつ、イデアくんでも想定してない使い道してきそう。」
「あー、確かに。
レオナ先輩なら、騙すならまず味方からって感じでイデア先輩に全く説明せずに奇襲かけて、説明してくれたらもっと威力を上げられたのですぞキングスカラー氏! とか言って、びっくりしすぎてオドオドモード解除になったイデア先輩と上手く共闘に持ち込みそう。」
「あー、ありそうだねー。
監督生ちゃん、レオナくんのこともイデアくんのことも結構把握してるねー。」
「お二人共寮長されていて目立ちますからね。レオナ先輩はあの後結構面倒見て下さってますし。
イデア先輩はあんまりご縁がないけど、アズール先輩に用事があってボードゲーム部にお邪魔した時に、そんな感じだったので。」