何がきっかけだったか、幽霊となった友人と暮らしているうち、自らも死を選ぶことにした。
その後、見えた景色は、自分が乗っている木製の手漕ぎ舟と先の見えぬ長い川だった。日本では有名な話だ。三途の川だとすぐに分かった。三途の川とは、死後の魂が辿り着く場所であり、川が辿り着く奥深い場所にある地獄と、川岸に咲く花々に囲まれた美しい極楽浄土がある。
ここから先は独りか、と呟けば、聞き慣れた声が後ろから聞こえる。
「僕もいる」
振り返ってみれば、友人であるD君の顔が見えた。彼が事故に遭った時の、黒く濁った白い学ランの姿だ。恵まれた背丈のおかげで溺れていない。
けれど、明らかに息苦しそうな様子に早く乗るよう声をかけて手を貸した。
2043