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    しきしま

    @ookimeokayu

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    しきしま

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    です

    パトロンのおじさん×モデル大学生 蝉の声が煩わしい夏だった。
     クーラーで冷やされた部屋のベッドの上、樹里は一糸纏わぬ姿で私を見つめていた。日に焼けた健康的な美脚と、甘く蕩けた瞳の対比が倒錯的で美しかった。脛も脇も綺麗に毛が剃られていて、陰毛も整えられている。肩や腕は存外にがっしりとしていて、少し痩せた腹には筋肉の凹凸も見えた。一重の切長の目と、高い鼻とぽってりとした唇を調和させたその顔は表情に乏しく、感情を感じさせない。その無表情の官能を、私のカメラは卑しく捕らえていた。

    「なぁー、俺、どんなポーズでおったらええの?」

     甘ったるい声で樹里が尋ねる。その媚びたようにも聞こえる声は、樹里の美貌に相応しいようにも、不似合いなようにも思えた。

    「樹里の好きな格好でいいよ」
    「俺、よう分からんもん」
    「じゃ、片脚だけ伸ばして寝転がって、こっち見て」

     樹里は、長い脚を伸ばして、じっ、と私の顔を見つめた。

    「カッコよく撮ってや」
    「うん、すごくカッコいいよ」
    「ほんまぁ?まぁ俺、イケメンやからな」

     少し不恰好な笑顔を浮かべて樹里は言った。官能的な無表情が崩れるさまも美しい。

    「次は目伏せて、腕上げて……、そうだね、すごく良いよ。カッコいい」
    「ふふ」
    「背中も見せて」
    「こう?」
    「そう……、ああ、良いね」

     何枚か写真を撮って、樹里が分かりやすく飽きてきたところで撮影をやめた。写真が全てというわけではない。単なる中年男の私が、表面上であれ樹里に懐かれているというだけで嬉しいものだった。
     樹里は、今年上京したばかりの19歳の大学生で、無名ではあるがファッションモデルをやっていた。186cmの長身で、股下90cmの美脚を持ち、人懐っこい話し方が魅力的だった。
     私は、彼とあるアプリで知り合い、それからずっと金銭的な援助をしていた。独身の私は、有り余る金で樹里の求めるままハイブランドの鞄や服を買い与え、その見返りに、体には触れないという約束で、裸の写真を撮ったり、自慰をする姿を見せてもらったりしていた。

    「写真撮り終わったから、ご飯でも食べに行こうか」
    「あー、俺、焼肉食いたい!」
    「良いよ。お店に電話してみるから、樹里は服着てて」
    「んい」

     曖昧な返事をして、樹里は脱ぎ捨てていたシャツを手に取った。私が買ったブランドのシャツは、樹里の体によく馴染んでいた。

    ***

     食事を終えて部屋へ戻る。
     樹里はその長身ゆえか、本当によく食べる。若い男の子にはご飯をたくさん食べて栄養をつけて欲しいから、樹里くらいの大食漢が私にはちょうどいい。樹里がうまそうに肉を食っているところを見ているだけで、私の心は満たされる。邪な関係を結んでいるのにも関わらず、私は樹里に、健康的で健全な男の子でいて欲しいと願っていた。

    「お腹いっぱいになった?」
    「うん! もうこのまま寝そお」

     ソファに寝そべりながら樹里がつぶやく。我が物顔で自宅に居座られるのも悪くない。

    「寝ちゃダメだよ」
    「んんー、ええのー」
    「寝たら襲っちゃうぞ」

     言ってから、これは禁句だったかもしれないと思った。
     樹里が、本気にして怖がってしまうんじゃないかと考えたのだ。だが、樹里はさほど気にしていないようすだった。

    「徳永さんなら大丈夫やもん」
    「そう思う?」
    「うん、徳永さん、優しいし、約束守ってくれるし、ええ人やもん。好き」

     若い青年に金を払って裸の写真を撮る大人がいい人のわけがない。私が樹里を甘やかすのは、少しでも樹里に好かれたいからだ。だが、樹里の信頼と好意を、私は裏切ることはできない。
     樹里はそのまま、ソファの上で本当に寝てしまった。
     甘ったるい寝息と、服の中からちらりと覗く臍と、長い睫毛と、油断した可愛らしい寝顔。
     本当に襲ってしまいたくなる。めちゃくちゃにして、私に溺れさせてしまいたい。でもそんなことはしない。ただ、その寝姿を見て、微笑むことしか私にはできないのだ。
     年甲斐もなく簡単に隆起した股間に手を這わせる。体は単純だし、隠し難い。だが、この魔物を、樹里に向けることはしない。

    「私も好きだよ。愛してる、樹里」

     歪で美しく、愛おしいこの関係を、私は崩したくはない。
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