はらはらと落ちた。
それには名が書いてあった。
そして私たちは道を分かった。
「父上も、剣を振るう時に目を瞑るのですね」
執務の合間、気分転換に双剣を持ち出したら息子が覗きにきた。
「禅もです。よく子龍に叱られます」
剣が似合わない子が口にした言葉に、忘れていた北の都の古い記憶が呼び起こされる。
まだ若かった頃、同じことを人に言われた。
君は、剣を振るう時に目を瞑るのだな
それはいけない、とその人は続けた。
進む者は見なくてはいけない
「でも、できたら見たくないですよね」
屍を重ねて進むその道を
「血と肉が吹き飛ぶ様など」
劉禅は同意を求めるように父親に笑顔を向ける。
劉備は父として、先導者として応えるべき言葉を持っていなかった。
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