龍牙のはなし龍牙にとっての涼は『護るべき大切な人』だった。
失いたくない、辛い思いをして欲しくない、恋愛感情にも近い感情で誰よりも大切にしてきた人。
家庭環境が荒れていた龍牙にとって、涼は不思議でならない人だった。
父や兄弟はなく、母も昼職パートからの夜職。
帰りが遅いことは日常茶飯事で適当な食べ物やお金が机に放置されており、知らない男が来ては蔑ろにされていた日々。
いつも喧嘩で怪我をして、ボロボロな自分に家も大きく身なりの整った歳上のお兄さんが何故優しくしてくれるのか。
家族ですら、ないのに。
龍牙にとって、涼は何故か自分に優しくしてくれる人。
涼にとっては放っておけない可愛い弟。
そんな涼が引っ越してからの龍牙は支えが無くなり、荒れに荒れていった。
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