祝福の鐘が鳴っている。
ライスシャワーとたくさんの歓声を浴びて新郎新婦は歩いていた。空は晴れ、風は穏やかに吹き、太陽は優しく二人を照らす。いま、世界の誰であっても彼らの幸せを汚すことなどできない。何よりも美しい光景。
間に合って良かった。
宮野志保は少し離れた所から新郎新婦を眺めていた。
先程までは彼女も、他の招待客と同じように新郎新婦の近くで祝福の輪の中に居た。けれども少しだけ、ひとりで感傷に浸りたくなってしまったのだ。そっと抜け出してきたから、他の人には気づかれていないだろう。元より今日の主役は彼らなのだから、招待客の女が一人、輪の中から消えても誰も気に留めない。
だというのに、目ざとく気づいてわざわざ追いかけてくる物好きも、いるらしい。
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