吟詠コプヤン風呂上がりのヤンはふかふかのソファに身体を沈めて、頭上を吹き付ける温風に身を委ねていた。シェーンコップが彼の後ろに立って、ドライヤーを当てながら手櫛で黒髪を整えていく。大きな掌で頭に触れられるのはとても心地よくて、うとうとと寝落ちしそうにもなるが、今夜のお楽しみはこれからが本番なので眠ってしまう訳にはいかない。
「はい、こんなもんでしょう」
シェーンコップがドライヤーを止めて軽くヤンの肩を叩いた。
「ありがと」
振り返ったヤンの顔を見て、美丈夫は灰褐色の目を怪訝な様子で細めた。
「おや、少し肌が乾燥してるじゃないですか」
ヤンの顔に手をやって頬をそっと撫でる。
「んー?そうかな……あんま気にしなくていいんじゃない?」
「いけません、あなたそれでもアイドルですか?」
シェーンコップはドライヤーを片付けて、今度はクリームの容器を持って戻ってきた。中身をヤンの頬や額に塗り付けると、ほんのり薔薇の香りがした。
「コレって…」
「前にコスメメーカーとのコラボ企画で作ったものです。保湿力はお墨付きですよ」
よくよく見たら、蓋の部分にシェーンコップのマークである薔薇の紋様が描かれていた。
「ありがと。でも、そんなものに頼らなくても、君に抱かれれば肌ツヤも良くなるよきっと」
黒髪の青年はシェーンコップの首に腕を回して、蠱惑的な笑みを浮かべた。
「補給、してくれるかな?」
「ええ、たっぷりと」