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    SALVA.

    一次創作、低頻度稼働中。
    小説、メモ、その他二次創作など。
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    SALVA.

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    ドロの悪業について
    彼がヴェンゾとして生きていた時
    犯していた罪

    共食いの悪魔三途の川にそびえる岩山。
    そこの隙間に住み着く1匹の悪魔。

    今日もまた不幸なことに、1匹の堕凶魔が彼の元へ迷い込む。

    彼はその堕凶魔の話を聞いて、こう言う。


    「そうかい、そうかい。
    君のことはよぉく分かったよ。うん、とてもね。
    話すのも辛いだろうに、よく打ち明けてくれたね。

    教えてあげよう。
    君は、何一つ間違っていない。
    今君が僕に打ち明けてくれたことは全て正しいよ。

    ああ、そう、そうなんだよ。
    おかしいのは君以外の全てさ。
    君が正しくて、周りがおかしいだけなんだ。
    本当だよ。間違いない。

    君が正しいことを言うから、周りは悔しくて
    君のことを貶めようとする。
    間違いである自分たちに反するものがいなくなれば
    自分たちは正しくなると思っているんだよ。
    とても愚劣だろう?

    それに反して君は…あぁ、本当に…いい子だね。

    僕は君が正しいことをちゃんと分かっている。
    だから、そう怯えることは無いんだよ。
    僕だけは君のことをよく分かっているんだから…

    気が楽になったかい?
    そうか、それなら良かったよ…
    君はまたここにおいで。…そう、定期的に顔を出すといい。
    正しくある君が間違った世界で生き残るのは…とても苦難かもしれない。
    けど、道はあるんだ。僕はそれを知っているよ。

    教えて欲しいだろう?

    いいとも、教えてあげるさ。
    君が僕を信じてくれるならばね…

    君が僕を信じるなら…
    僕は正しい君を、必ず支えると、今ここで誓おう。

    本当さ。僕は君のことを覚えているよ…
    だから…あぁ、どうかまたここへおいで。」



    彼の優しい言葉に惑わされた堕凶魔。
    正しい心との葛藤の末、またしても彼の所へ。



    「…ああ、おかえり。待っていたよ…
    うん?…あはは、まさか。忘れるわけないさ。
    僕は君を待つと言ったろう?

    僕は約束は守るタチでね。
    この見た目からは想像しにくいかもしれないが…

    あぁ、すまないね、来てそうそう自分の話ばかりで…
    立ちっぱなしでもあれだね、ここへ座るといい。
    あぁもちろん、少し汚れていて構わなければだが…

    いいかい?よかった。

    …うん?あぁ、ごめんよ。
    君が戻ってきてくれたことが嬉しくてね。
    つい笑ってしまうんだ。

    そうさ。僕はいつもここでひとりきりだからね。
    君のように優しい子が来てくれると、心が温まるよ。
    本当、よく戻ってきてくれたね…

    さあ、僕と話さない間にどんなことがあったのかな。
    教えてくれるかい?
    どんな細かいことでも、なんでも聞くよ。
    君が望むならね…

    そう。君は間違ってないんだから。
    おかしいもの達を貶すのは、愚かではないよ。
    そう、大丈夫。ここにいるのは僕だけだ。
    そしてその僕は、君のことをただ1人、理解しているよ。

    ほら、話してごらん…全て、思うままに…
    遠慮なんて勿体ないこと…しないで…

    君が言うことなら
    なんでも、なんでも、なぁんでも…

    受け入れてあげようじゃないか。」



    しかし、外では思うように上手くいかない。

    自分を差別的な目で見る悪魔を憎み

    その怒りと悲しみの矢先をどこに向けることも無く

    ただまた、彼の元へ。



    「…あぁ、おかえり。

    …どうかしたかい?

    …何がって、辛い顔をしているようだから…

    …当然さ。だって、僕と君の仲だよ。
    僕が君の変化を分からないわけないだろう?

    どうしたんだい、話してごらん。
    言葉では足らないと言うなら、僕に当たってもいいんだよ。
    僕は君のことを分かってる。
    君が誰かを殺めてしまってもおかしくない状態であることを。

    そんなわけない?
    いや、僕には分かるんだよ。
    色々な子を見てきたからね…普通の子も…堕凶魔も。

    君ですら気づいていないほど、君は疲れているよ。それがあまりにも目に見えて分かるから…
    あぁ、ごめんよ。気にしないでくれ。
    何分僕も辛くてね。君を助けてあげられたらどんなにいいかと……すまないね…

    君の話を聞いてあげることしか出来ないほど僕は無力でねぇ…

    …!


    …君は、僕を慰めてくれるのかい…?


    …あぁ、あぁ、君は…なんて優しい心を持っているんだい…
    君自身のことで余裕なんて無いだろうに…
    こんな愚かな悪魔のことを気にかけてくれるなんて…
    今までそんな子はいなかった。
    皆僕を馬鹿にしていたから。
    そうさ。
    今の君と、同じような目に遭っていたよ…

    ありがとう、ありがとう。
    嬉しいよ。君と出会えて本当に。

    やはり君は、間違いなく正しいよ。
    君は、何も間違ってない。
    おかしいのは君以外だ。
    君を責めるヤツらだよ。

    あぁそう。殺したくなるのも無理ないね。

    しかしね、感情というのは抑えると廃れてしまう。
    抑えて、我慢して、やがて廃人となる…
    正しい人ばかり損をするのはもう、見たくないんだ…
    まして君には…君には…その心根を失ってほしくない。こんな美しい心を持っている子を見たことないんだ…

    もしも、君が他者を殺めても…君を責めたりしないよ。誓って言えるさ。
    いいとも。君が誰かを殺したとしても。
    それは間違いじゃない。

    そう、そうだよ。うん。
    間違ってないよ。君は正しい。

    …いい。
    そんな頭がおかしいヤツら、殺してしまおう。
    賛成だ。僕は心から賛成だ。

    僕を信じて。
    そう、信じていいんだ。

    僕は、嘘はつかないタチだから。

    今まで僕が嘘をついたことあったかい?ないだろう?

    大丈夫だ。
    君は誰よりも正しいよ。

    殺しておいで。
    消しておいで。

    君が嫌なものを、その全てを。


    君は、少しも、間違ってないからね。」



    言われるがまま、堕凶魔は

    憎たらしかったその悪魔を殺した。

    背中を追われる恐怖の中

    彼の元へ逃げ帰る。



    「…おかえり。

    おかえり、うん、おかえり。
    来てくれたんだね。待ってたよ。

    あぁ、よく頑張ったね。
    よくやったね。よしよしよし…

    怖かったろう。苦しかったろう。
    それなのによく頑張った。
    誰にでもできることではないよ。

    周りに責められたんだね。
    本当に可笑しいよ。
    みんな自分たちが正しいと疑わないんだ。
    君のように真に正しい子を認めようともしない。
    この世の中は腐っているからね。

    それなのによく君は現実を見れたね。本当に辛くて怖い道程だ。
    君が踏み出してくれて僕も安心したよ。

    いいとも。泣いていいんだ。
    もう君は、僕の仲間だろう?
    何も間違ってない。これでいいんだよ。


    …そう、もう外には出られないね。
    君を間違っていると思う彼らは、もう君を認めてくれないんだ。残酷なことにね。

    僕と暮らそう?
    ここで共に。

    ここなら誰にも責められない。僕とふたりで、いつまでも一緒にいるんだ。
    僕は君を責めたりしないし、追い出したりしないよ。

    君が拒むなら…無理強いはしないけど。


    …本当かい?僕と一緒にいてくれるんだね?

    あぁ…嬉しい。
    実の所僕も寂しくてたまらなかったから。君といられたらどんなにいいかと毎日夢見ていたんだよ。

    堕凶魔だろうと構わないさ。
    君は僕にとって、最高の友人さ。

    うん、僕もそう思うよ。
    君は正しい。誰よりもね。


    改めて…


    ありがとう。


    ありがとうねぇ、ここへ来てくれて。


    そして…



    よく来たね、僕のところへ。」



    暗い洞窟の中、2匹で過ごす時間が過ぎる。

    堕凶魔として、ここまで幸せな時間はなかった。

    共食いをする運命になってもなお

    彼といることを選んだ。



    「いいかい?
    僕らを拒む奴らは皆間違っている。

    その時は、彼らが正しい者達の役に立てるよう仕向けてあげるのが、正しい者達の義務だろう?

    そう、その通り。

    僕らが長生きできるよう、食べさせてもらおう。
    優しく言えばいいんだ。
    優しく言って、僕らの役に立ってもらうんだ。

    味は不味くても文句はダメだよ?
    どうあれ、僕らは彼らのおかげで長生きできるんだから。」



    ある日のこと。

    堕凶魔を想う古い友人が1匹

    彼が洞窟に住んでいることを知り

    連れ帰ろうと、堕凶魔の手を引いた。



    「だめだよ。


    その汚い手で彼に触っちゃ。」



    連れ帰ろうとしたその悪魔を

    目の前で火をつけて殺すドロ。

    唖然とする堕凶魔。

    悲鳴をあげて死ぬ友人を

    ただ見ていることしか出来ない。



    そこで初めて堕凶魔は

    この現状がまともでは無いことを悟り

    我に返る。

    この悪魔は狂っている。

    そうして彼に、友人を殺した恨みをぶつけた。




    「…………狂ってる?




    …はは、ははははははは!!!

    聞き間違いかなぁ!!
    一体どの口が言ってるんだろう!!
    命を殺しておいて、何言ってるんだろう!!わからないなぁ!!!


    …ねえ。

    僕が狂ってるなら君も狂ってるよ。
    とっくの昔にね。

    君も自分は正しいと思ってきたんだろう。
    そうさ「あいつら」と同じようにね。

    君なんてねぇ、そこらのヤツらと変わらないの、分かるかい?
    君は自分を過信しすぎただけだよ。

    …何言ってるの。
    君は最初から間違ってるよ。
    いつ誰が君を正しいと言ったんだろう?


    うん?僕が君を正しいと言った?

    そうだね、確かに言ったかもね。

    けど君はただ、そう言って欲しかったんだろう?
    間違ってる自分を肯定して欲しかっただけだろう?
    だから言ってあげただけさ。
    君が本当に正しいかなんて、関係なしにね。
    君が望んだことじゃないか。
    君が自分で望んで、自分で僕のところに来て、すがって。
    自分で殺したろう?

    なあ、そうだろう?
    僕は何もしてないだろう?

    つまりはねぇ、全て君のせいなんだ。
    君がこうなったのは、

    君の友人がこうして死ぬのは

    ぜんぶ、君のせいさ。


    僕はあん───────なに君を肯定してあげたのに、君を正しい人にしてあげようと頑張ったのに…よくまあその恩を裏切って僕の努力水の泡にしてくれちゃって…

    飛んだ濡れ衣だよ。自業自得だろうに。

    はは、君はわかってくれると思ったのになぁ…


    結局君は何も分かってない。
    僕のことを少しも。



    君は間違った悪魔だよ。
    間違ってる自分を過信して

    他人のことを見なかった馬鹿さ。




    …悔しいかい?
    今になって自分のことが分かって。
    そうだね、さぞ辛いだろうね。

    でも事実さ。
    君は正しくあるのは自分だけだと思っていたようだから。


    そう、僕のことを差し置いてね。



    でも大丈夫。
    君はどうせ外じゃもうとても生きていけないだろう?

    安心して。
    君も役に立てるからね。
    僕が君を役立ててあげるから。



    そう、唯一正しくある
    この僕のために。」



    ドロは堕凶魔を

    絞首で殺害し

    その体に股がったまま

    愛おしそうに首筋に顔を埋め

    齧り付いた。


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