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    SALVA.

    一次創作、低頻度稼働中。
    小説、メモ、その他二次創作など。
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    SALVA.

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    ラヴが満月を嫌う理由

    満月ラヴには母と、年の離れた姉がいた。父は離婚したためいなかったが、母はラヴが4歳の時にジャマで亡くなる。

    以降姉に育てられる。

    彼の姉はいつもラヴを過保護に扱っていた。
    姉は、古代種に近い遺伝子を持って生まれたラヴが周りに「奇形」とか「風変わり」と言われていることが許せなかった。
    実際ラヴは平均に比べれば二足歩行を習得するのが遅かったし、野性的な点が多く存在した。

    姉はラヴに可能な限り付き添って行動しては、何か言われると
    「私の弟を酷く言うのは辞めて」と周りに長々と説教した。


    姉はラヴの事を想っていた。
    しかし、それとは逆に、ラヴは姉を嫌っていた。

    「奇形に生まれたのは運命よ。変でも仕方ないわ。」
    「彼は羽が小さいから飛べないのよ。家系で1番小さいわ。」
    「彼四足歩行のほうが得意なの。ほぼ古代種だから。」
    「彼は周りと違うんだから同じように扱わないで」

    姉が周りに主張する言葉全てが、彼にとっては差別用語だった。
    本人に悪気はなくても、とても悪い言葉に聞こえた。


    ある時。
    ラヴは地球に遊びに行きたくて出かけようとした。

    姉は「もし人間に見えて悪口言われたらたまらないわ」と、無理やりついて行った。

    地球に降りてからも、姉はうるさかった。
    仕事で来ていた悪魔などに何か言われると反論し、別にラヴのことに触れていなくても全てをラヴの差別と結びつけて相手を非難した。

    ラヴは、いつだって姉の管理の下だった。



    またある時、ラヴは地球に行きたくてこっそり抜け出した。
    姉と少しでも離れようとしていたのだ。

    しかし姉は直ぐに感づき、追いかけてきた。

    近くにいた悪魔と仲良くできていたラヴを見つけるなり、姉はラヴを悪魔たちから引き剥がしてまた怒った。

    帰らざるを得なくなる前、取り巻きの悪魔はこっそりラヴに言う。

    「来週、スーパームーンの夜がある。良かったら見においでよ。」
    彼らは直前まで地球の綺麗な景色の話をしていたのだった。


    そしてその日、彼は姉に逆らって地球へ降りようとした。
    しかし、姉は着いてきた。
    「別に行くのはダメじゃないわ。
    あなたが周りに差別されるのが嫌なだけよ」

    姉は過剰に心配していた。それはもはや異常だった。


    そして美しい満月を見るために地球に降りる。
    よく見えるよう、高いビルの屋上に降りてその夜空を見上げた。

    しかし、空は曇っていた。
    とても月なんて見える状態じゃなかった。

    姉は言った。
    「彼らはあなたを騙したのよ。あなたをからかって、曇ることを分かっていながらあなたを誘ったんだわ。

    ねえ、ラヴ。
    あなたは差別されやすい悪魔なのよ。
    分かるでしょう?

    羽も小さくて、不思議な骨格で、物も掴めず、普通の生活ができない。

    もっと身の程をわきまえなきゃ。

    奇形は奇形であることを認識して、生きる姿を考えて。

    じゃなきゃあなたは孤独よ。

    そうでしょう?ラヴ。

    姉さんが言ってることは正しいでしょう?」



    「……………舐めてんじゃねえよ!!!!」


    姉の被害妄想には、ラヴも耐えかねていた。

    怒りが爆発したラヴは、姉の首に噛み付いた。

    しばらく取っ組みあったあと、押し倒された姉は言う。

    「…私は邪魔なのね、ラヴ。

    こんなにもあなたを心配してやってるのに


    殺せるなら殺していいわ。

    あんたがそうしたいならそうすればいい。

    どうせあんたはずっと孤独よ。

    けど私がいてあげれば変わると思ったから

    一緒にいてやったのよ。」


    姉は、奇形や堕凶魔をひどく差別するやつだった。

    殺そうと思えば殺せる。殺そうと思えば。

    「…それが、俺を傷つけてたって言ったら?」

    その体制のまま、そう問う。

    長い沈黙の末、姉は起き上がって言う。

    「…そう。そうだったの。


    …最低ね、私」


    そして、自分の羽をちぎった。

    「!!!」

    そしてそのままフラフラと歩く。

    月明かりのない視野の悪い中

    俺の姉はビルから落ちた。


    ラヴは急いで地上に降りる。


    姉は地面に叩きつけられて死んでしまった。



    死んだ姉とラヴを今更顔を出した大きな満月が白く照らした。



    「………………あぁ、あぁあ」


    白く照らされ、その自分と、死んだ姉を見たラヴを襲ったのは、酷い後悔だった。


    そうだ。姉ちゃんの言う通りだ。
    俺は堕凶魔に勘違いされやすかったし、古代種の骨格のせいで白い目で見られることが多かった。
    俺が浮きやすいのを分かってたから、姉ちゃんは一生懸命俺を守ろうとしてくれていたのに。

    …ただ、それがほんの少し行き過ぎていただけ。

    傷つける必要なんてなかった。

    噛みつきたくなんてなかった。

    俺の姉だ。たった1人の血縁だった。

    ただ、分かって欲しかった。

    俺は姉ちゃんにこんなに守られなくてももう生きていけるって。

    ちょっと見返して、独立したかった。

    独りでも平気だって証明したかっただけなのに。


    …なんで、こんなことに。




    そこに現れたのがトワイラだった。
    知らない顔だったし、優しい声でどうしたのか聞かれたから

    いつもみたいに

    いつもみたいに甘えたくなって全部話してしまった。


    そしたら



    「そっか、それでお姉さん、死んじゃったんだ…

    それは……………………



    傑作だ!!!!ウケるwwwwww

    お前さぁ、全然独りでやれてねえじゃん!!
    見知らぬ天使なのにちょっと優しくされただけでそんな泣いて全部べらべら話しちまうとか、どんだけ他人に甘えてたんだよバァーーカ!!!

    独りでやっていける!?笑わせてくれんじゃん!!

    お前みたいな頭の小さな奇形はなぁ、どう足掻いたって他人のスネかじってなきゃ生きていけねえんだよ!!
    なぜならひとりじゃ普通の生活出来ねえからなぁ!!!
    はははははwwwwwwww

    それなのに大事な姉貴傷つけちゃってさぁ!!お前が殺したようなもんじゃん!!馬鹿なの!?!?
    いや馬鹿だよなぁ!!!!」


    「俺は普通の生活がしたかったんじゃねえよ!!!!」



    ラヴは叫んだ。


    「一言も言ってねえよそんなこと!!!
    普通の生活をするために独りになりたかったんじゃねえよ!!!


    俺はただ!!!


    こんな俺でも!!!


    こんな見た目でも!!!


    否定しないで欲しかった!!!


    俺の姉なら差別しないで欲しかった!!


    俺を弟として愛して欲しかったんだ!!」



    そして姉に蹲って泣く。




    そんなラヴの近くにしゃがんだトワイラが、ラヴの頭を撫でた。




    「…かわいーなwまるで犬みてえだ。
    誰かに愛されたくて仕方ねえんだなw

    はw

    挙句姉貴に愛されたかったくせに殺しちまうとかw

    飼い主に噛み付く犬みてえw

    不器用だなぁwかーわいw


    そんな可愛いお前にいいこと教えてやるよ。



    何勘違いしてんのか知らねえけど
    奇形なんてこの世界じゃ当たり前なんだよ。


    いちいち差別してられっか?」



    俺はちぎられた姉の羽を持って地獄へ帰った。

    もちろん俺は殺害を疑われた。

    けど、俺の上司の皎撈や友人は、俺の姉の過剰な態度を知っていたし、この地獄を統べる朱撈が俺の無実を証明した。

    みんな、俺を罪に問わないと言ってくれた。


    その時に俺は、自分はそんなに差別されていなかったと思い知った。

    姉の言葉を信じすぎるあまり、被害妄想をしていたのかもしれないと。




    俺はみんなが好きだ。
    こんな俺でもちゃんと愛してくれている。
    みんな、俺をほめてくれるから。



    ただひとつ、満月が嫌いだ。


    あの夜、死んだ姉を容赦なく俺に照らしつけたあの満月を。


    俺は許さない。
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