命にふさわしい まだ寝ていていいよ、と桑名が言った。
薄く目を開けると、寝間着の浴衣のままの桑名が半身を起こして、松井の額髪をゆるく撫でていた。
障子窓越しに白々と差し込む朝陽の加減から、皆が起き出すまでには間があるけれど、そろそろ桑名が畑に出る頃合いだとわかる。
もう行くのか、と言いかけて、喉が引っかかって乾いた咳が出た。桑名が枕元に置いてあった水差しから湯呑みに水を注いで渡してくれる。半分ほど飲んで、「ありがとう」と湯呑みを返したけれど、その声はまだ掠れていた。
「ごめんね、昨日は」
起こした上体を抱えられてもう一度布団に横になった。心配そうな桑名の表情を見て、首を傾げる。
「松井昨日、最後は…その、気絶しちゃったでしょ?」
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