雌獅子は愛を抱く③「久しぶり! 可愛い赤ちゃんだね獅子神さん、ところで誰の子?」
暫くの硬直の後、気を取り直したように真経津が言った。その言葉にさも何を分かり切った事を、とでも言うかのように獅子神は片眉を跳ね上げて見せる。
「オレの子だけど?」
「いやそういう事じゃなくて」
頭を掻きながら珍しく言葉を選んでいる様子の叶に、重ねて応える。
「オレの、子だけど?」
寧ろ他の何だというとばかりに圧を籠めれば、その程度で怯むようなタマでは無い筈の真経津と叶は声を揃えた。
「「アッハイ」」
「――村雨君、村雨君大丈夫か、しっかりしろ」
静かな後方では天堂が村雨の肩を揺さ振っている。
大きな眼鏡の向こうの目は閉ざされ、元々血色が良くない顔は今は完全に血の気が無い。睡眠不足だろうか、今すぐ自宅に帰って寝ていろと獅子神は思う。
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