飼育「ただいま」
ガンガディアは言いながら自室のドアを開けた。すぐドアを閉めて小さな姿を探す。部屋はしんと静まりかえっていた。
「大魔道士?」
マトリフにはこの地底魔城のガンガディアの私室を自由に使わせている。マトリフはすぐに顔を見せた。ベッドのシーツに潜り込んでいたらしい。マトリフはそこから抜け出すと、飛翔呪文で飛んでガンガディアのところまできた。
「なにも問題なかったかね?」
マトリフはこくりと頷いてガンガディアの肩に座った。ガンガディアは指をマトリフに向ける。その指はマトリフの歯型だらけだった。
マトリフはガンガディアの指に頬を擦り寄せる。今日は噛まないのだろうかとガンガディアが思っていると、マトリフはかぱっと口を開けてガンガディアの指に噛み付いた。ピリリと痛みが走る。マトリフは口を離すと歯型を確認してからそこを舌で舐めた。それはマトリフなりの愛情表現なのだとガンガディアは思っていた。
1206