夜に瞬く草木も眠る丑三つ時。編集部の入った深夜の雑居ビルに居残っている。
終電ももうとっくに終わったというのに、周囲のビル群は同じように煌々と明かりが灯り、夜の街を輝かしていた。
戸締りだけはしっかりとな、と唐次に鍵を預けて編集長はいなくなった。こうやって誰かが居残って原稿を仕上げるのは、この編集部ではよくある光景らしい。
よくあって良いのか、とは思ったものの、それを突っ込むのは野暮というのだろう。いやいややっているならまだしも、唐次はこの残業に意欲的だ。
勢いで原稿を書き上げてしまいたいのだと。
手伝えることは手伝った。資料をかき集めてまとめて、唐次が取材した録音データを文字に起こした。
だが、最後に一つの文章としてまとめて原稿として書き上げるのはどうやったって一人の人間が行わなければならない。おれは手持ち無沙汰になって、そこらの雑誌を読んだり、手帳を読み返したりしていた。
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