西の辺境の戦場にて・2敵兵が撤退するのが見えて、戦は一段落した。味方の兵士や傭兵たちは一様に疲労と安堵を表した。リカルドは一通り辺りを見渡した後、漸くライフルを収めた。硝煙や砂塵が舞う中、味方の無事を確認しながら歩いていると、ハスタが槍の穂先を地面に刺して蹲っているのが見えた。彼の周囲には一際死体が──原型を留めていない形も多く──堆く倒れている。血肉がそこかしこに散らばっている。あまりの悍ましさに、味方の誰も彼に近付こうとはしない。リカルドはハスタの様子が少しおかしい事に気付き、眉を顰めながら彼に歩み寄った。
「ハスタ、何をしている」
声を掛けると、ハスタはゆっくりと振り返ってきた。特に何でも無さそうな──というより、何を考えているのかさっぱり分からない──表情をしている。しかしよく見ると、口元が僅かに歪んでいるような気がする。
1747