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    merino

    @guiltysheep

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    merino

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    昔の文章。途中まで。
    続きはあるけど書けるかな…。
    角付きひつじのキャラに物語を与えたかった。

    ##文章

    とある少女の物語*誕生と出会い*

    気が付いた時には既に僕は存在していた。
    まるで眠りから覚めた様に、瞼の先と中との区別を認識するのに
    時間はかかったが、今この場所に僕が確かに実現しているという感覚は確かに感じた。

    ただ、たった今座り込んでいるこの世界のように、
    記憶だけは真っ白だった。

    そう、白。

    真っ白。

    床も、天井も、壁も無い様な。

    あるのは、ただの、白。

    真っ白な紙に、黒い点を描く。
    黒い点は僕。
    それ以外に何もない。

    耳が痛くなるほど音もない世界。
    聞こえるのは僕の呼吸と鼓動。
    同じ景色の中、目を閉じることだけで暗闇を感じることができた。


    何故ここにいて、何をしているのかすらわからなかったが、
    ただ唯一自分の名前だけは知っていた。


    いつまでその場に座りこんでいただろう。
    何をすればいいかを思い当たることもなく、そこにいることしかできなかった。
    先の見えないここで、歩く気にもならなかった。

    今、視界に入るのは白い空間以外に僕の存在があるという証になっている
    僕の身体と服。
    空色の服。
    ドレスのような、フワフワした、女の子の服。

    見たことのない服。
    自分の着ている物なのに、それに対する記憶がないというのは何だか不思議な気分だった。


    そして、それは突然に。


    今まで元からそこにあったかのように、現れた。

    白の中にある、僕とは別の色。
    手に取ると、感じたことがない感触。

    それが、「本」であるというのは、記憶のない知識が知っていた。

    そんなに厚くない本の表紙をめくる音がその空間に心地よく響いた。

    つらつらと文字が連なっている。
    文字は難なく読めた。
    だが、それがどこの国の文字なのかはわからなかった。
    ただ、書いてある内容しか理解できなかった。

    どうやら、記憶はなくとも多少の知識はあるようだった。

    僕はその本を、読み始めた。
    何かの物語らしいが、現実の話なのか作り話なのかはわからなかった。
    ちぐはぐな内容で、物語として成り立っていないような気がした。
    それでも、どんなことが書いてあるのかくらいはちゃんと理解できた。

    読み終わった時に視線を本から離すと、別の本がまた落ちていることに気が付いた。
    僕はそれを拾い上げて、また読み始めた。
    別の物語だった。

    読み終わりパタンと本を閉じると、表紙に掠れた文字で何かが書いてあった。

    「ゆ…め……に…き」

    夢日記?
    文字は薄く、読むのがやっとだったが確かにそう、「夢日記」と書いてあった。
    先ほど読んだ本にそれを重ね、辺りを見回す。

    本が落ちている。

    それが何回も繰り返された。
    他にやることがないといえば、そうなのだが
    僕はその本たちに異様なほどの興味を持っていた。

    知識や記憶への渇望だったのかもしれない。
    著者が一緒なのか、それとも複数人によって書かれたものなのかはわからないが、
    その本は止めどなく現れ続けた。


    不思議とお腹がすいたり、喉が渇くことはなかった。
    現れた本を片っ端から読み続けた。
    そのほとんどが物語で、たまに詩集のように書き留めたようなものもあらわれた。

    気がつけば僕の周りには本の山ができていた。

    読み終えた本とそうでない本を分けるのに苦労し始める頃に、
    棚が積みあがって現れた。
    本以外の物質だった。

    それが何であり、どう使うかは知っていた。
    僕はその棚に本を収めた。

    白かった景色はいつの間にか、巨大な図書館のようだった。
    本を読めば読むほどさまざまなことを知った。
    何がリアルで、どれが夢の中のことなのかも。
    だが、自分自身の記憶に関することは何もわからなかった。

    どれだけの間、本を読み続けていただろうか。

    次第に現れる頻度は少なくなり、
    最後にでた本を読み終わり、表紙を閉じる。

    同時に名前を呼ばれた。

    いや。

    気のせいだったのかもしれない。
    ただ、静寂をきった音の方へ顔を上げると、
    本棚と本棚の間に、何か光のようなものが見えた。

    それは扉だった。

    誰の姿もなかったけど、僕は自然にその扉の奥へ足を向けた。


    外に行けば、僕が何者なのかわかるかもしれない。

    扉を開けると森の中だった。
    一歩前へでて周りを見渡してみる。
    僕以外の人物は見当たらない。

    当然と言えば当然か。

    ふ、と後ろを振り返ってみる。
    そこには元から何もなかったかのように扉が消えていった。

    太陽が現れたせいで、リアルな時間という概念が生まれた。
    そして感じる温度や感触、そして音。

    一気に騒がしくなった世界。
    本の中で見てきた世界。

    それが僕の周りに溢れだした。

    木々に触れ、花のにおいを嗅いでみる。
    何もかもが新鮮に感じていた。
    だけど、歩いても歩いても、開けた場所にはでない。

    やがて日が暮れた。

    どうしよう。

    暗い森の中。
    昼間とは違う空気が流れ始める。
    同じ森なのに、どこか不気味だ。

    もしかしたら森の魔女が出てくるのかもしれない。
    いや、あれは本の中だけの話だったかな。

    歩き続けたせいで、疲れが出始める。
    心なしかお腹がすいているような気もする。
    木に寄りかかり座ると、一層森の音が大きく聞こえた気がした。

    (あとどれだけ歩けばいいのだろう)

    いや、そもそも、歩く理由などないのだ。
    どこかに行くあてなど、ないのだ。

    目を閉じて、そのまま眠りについてしまおうかと思ったが、
    立ち上がってまた歩き出す。

    (誰か、僕以外の誰かに会いたい)

    それが僕を動かした理由だったのだろう。


    歩いているうちに聞き慣れない音を耳にした。
    何の迷いもなくその方向に歩いていくと、
    少しだけ明るくなっている場所が目に付いた。

    湖…いや、池か?
    ぽっかりと空いた空間に、月明かりが差し込む。
    そこに水面がキラキラとゆらいでいる。

    水。

    覗きこんでみると自分の姿が映りこんだ。
    初めて見る、自分の姿だった。

    白くて短い髪に、湾曲した1対の角。
    肌は白く、瞳は茶色い。
    角の隙間から、ヒョコッと耳が垂れている。
    空色のドレスのような服がちゃんと見える。

    (これが、僕か)

    少しの間、満足するまで映る自身の姿を見てから、
    今度はその池沿いに歩き出した。

    でも、足の疲れは限界が近づいていた。

    (だれか…)

    ついには木の根っこすら避けられなくなり躓き転ぶ。
    扉を出る前まではなかった疲労感と心情。
    いっそ倒れたまま、本を書いた者がみた夢の世界とやらへ行ってしまおうかと思った。

    「これはこれは御嬢さん。こんなところで眠っていては風邪をひきますよ」

    知らない声。音。
    一瞬、夢を見たのだと思った。
    だが、僕に触れた暖かい感触が夢ではないのだと教えた。

    驚いて声も出さずに顔をあげる。
    暗くてよく見えない。

    「たてるかな?」

    僕を掴んだ腕に強い力が入り、僕の身体がふわっと浮く。
    疲れた足がまた地面の上に立ち、重力が戻ってくる。

    「大丈夫?」

    何も言わない僕を心配して声をかけてくれる。
    僕よりも背が高いその誰かは、目線を下げるために膝をついた。
    少しずつその誰かに月明かりがかかっていく。

    青い。
    青い服と、青い髪、青い目。
    そして、青い中に異様に目立つ、1対の赤い角。
    角の形は僕のとは違っていた。

    その姿は本の中にあった王子様のようでもあったし、魔王と呼ばれる怖い存在のようにも思えた。
    だが、僕以外の人がいたことには変わりがない。

    「…はい」

    うまれて初めて…、まぁ、僕の記憶がある中では初めて言葉を交わした瞬間だった。


    「どこからきて、どこへいくの?」


    つづく?
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