僕の考えた最強の英霊ロナドラちゃん魔術師の召喚に応じたのは、細い針金のような黒い吸血鬼を伴う、赤い衣裳の退治人だった。
当たりだ、と魔術師は思う。
それは子供たちが寝入り際にせがむ英雄譚で、どこの図書館にもある書籍の主人公だ。銃の名手と伝えられる。
「貴方が俺のマスターか」
僅かな緊張感をともなって退治人が問う横で、吸血鬼とその使い魔であるアルマジロは物珍しげに辺りを見回していた。
魔術師が是と返す。
退治人を扱うにはひとつ、条件が示された。退治人たちには二つ宝具を有しており、そのうちの一つは絶対に使用しないこと。
「使ったら俺は自害するし、その前にアンタを殴る」
退治人は素手で大型の敵性を殴り殺した逸話持ちた。それは絶対に避けねばなるまい。
彼は頼もしく、そしてともに過ごす時間は実に楽しかった。物語に違わず退治人の暴力に敵はないし、吸血鬼はかよわく盾にもならず使い魔をまるで生き物のように愛でるが、知識深く、代を重ねて研鑽を積んだ魔術師が、敬うべき存在であることを心得ており、話し相手に申し分ない。
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