変哲もない誕生日昇降口を抜けると、強い日差しが一気に襲い掛かってきた。あまりの眩しさに思わず目を細める。耳には喧しい蝉の声がひっきりなしに聞こえてきて、鬱陶しいことこの上ない。あまりの不快感に、荒垣はうんざりした心持ちで溜息を吐いた。
8月11日。本来ならば夏休み真っ只中だが、荒垣はまるで普通の平日のように学校に来る羽目になった。原因は普段の授業態度にある。無断欠席の常習犯でまともに出席すらしない日もあるのを見咎め、担任が強制的に受講者名簿に荒垣の名を加えたのだった。
「ったく、なんだって夏休みにこんな……」
「お前が普段サボってばかりいるせいだろ」
隣で額の汗を拭いながら真田が言った。荒垣とは対照的に授業は皆勤、日頃の自主学習も欠かさず当然成績も申し分ない真田が何故わざわざ夏期講習など受けにきたのかは判らない。真田とはもう随分長い付き合いだが、時折思考が掴めないことがある。
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