それは本当に偶然だった。
事件でも起きていたのか、道路の向こう側に人が群がっており、近くにパトカーが数台停まっている。しかしもう解決したらしく、撤収しようとしているところだった。警察関係者が大勢忙しなく動いている、その中に彼がいた。
(松田…あいつが出るような事件だったのか)
他の警官と少し離れた所で煙草を吸い携帯を見る松田。事件が起きていたとは思えない緊張感のない様子に呆れて苦笑する。
するとそこに、女性警察官が近づき松田に声をかけた。気を許している相手なのか、携帯から目を離してそれに応える彼が目に入る。何を話しているかわからないが、どこか親しげな様子に心がざわつく。浮気現場を見たというわけでもないのに、これ以上見ていることができずその場を後にした。
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