桜湯「エディブルフラワー?」
スティーヴが陶器の器の中を覗き込むと、ふわりと漂う湯気に乗って甘酸っぱい香りが拡がった。
「花を食べるんじゃない。この香りを楽しむドリンクなんだってさ。グレイスがクラスの子から貰ってきた」
ダニーはキッチンカウンターにもたれながら、つまみのないカップのふちを中指と親指で持ち上げた。
「この桜の塩漬けは、日本だとわりとポピュラーらしい。こうして飲んだり、お菓子にいれたり……」
おそるおそる口を付けたスティーヴが目を丸くする。
「塩気がある! 香りだけのハーブティーみたいなものかと思ったら、意外と旨いんだな」
「だろ? グレイスの友達のおばあちゃんが日本にいて、毎年送ってくれるんだと」
「甘い菓子に合いそうだ」
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