半分こその日、風信は皇極観の食堂に訪れていた。
空は随分前に日が暮れて、食堂が空いているギリギリの時間である。その為ほとんど道士は夕飯をすませ食堂内はガランとしていた。食堂に入ってすぐにある厨房に顔を覗かせ、慣れたように風信は声をかけた。
「阿姨(おばさん)、夕餉、まだ残っていますか?」
風信に阿姨と声をかけられた中年の女性が振り返る。
「少し待ちな」
皇極観に勤めて長い、恰幅の良い目の前の女性がこの食堂を長だ。風信はもうこの人とは何年もの付き合いで、食堂に来る時間が遅い時でも彼女の心遣いで風信の分を余分に作って残しておいてくれている。今日に関してもそうだ。
そこに関しては、若干の特別扱いを感じているような気もするが、修練や殿下に付き添うような用事で定刻に夕餉を済ますことができない日もしばしばある風信としては彼女の好意は有難い限りである。
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