お題『西瓜』 蓮花塢の夏は蒸し暑い。
この時期、あちらこちらで蓮の花ひらく様はまるで仙郷のごとき美しさだが、水場が多いということは湿度も高くなるというわけで。蓮花塢の住人の関心は、このじっとりとした暑さをどのように凌ぐかということに向けられるのだ。
厳しく容赦のない宗主が率いる雲夢江氏の弟子たちも例外ではなく、その日は宗主の不在をいいことに、監督者の目を盗んで、修練場から抜け出した数人の少年たちが試剣堂でごろりと寝そべって、床板に涼を求めていた。
「お前たち! 何をやっている!」
「ひえっ!」
ふいに降ってわいた怒声に、少年たちは震えあがる。
苛烈な宗主が帰ってきたかと、顔を見られる前に別の扉から逃げ出そうと少年たちは考えたが、声が違うことに気が付いた一人が、好奇心から振り返った。
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