5.ようやくこの日が「いや、なんで!?」
2人きりにさせた後の事が気になったミヤは、うきうきとしながら店のドアを開けた。あんなに雰囲気が良かったんだ。きっといい感じになったに違いないと思っていたし、惚気話でも聞いてあげようと思っていたのに、ドアの先に居たオーナーは左の頬を真っ赤に腫らして、憂鬱なそうな顔でカウンターに頬杖をついていた。
「俺が聞きてーよ」
痛むのか、時折保冷剤で冷やしながら。大きな声でため息をついて。頬か冷たくなったらそれをまたポイと放おる。ジョーの前に座ると、眉尻を下げて申し訳無さそうに苦笑して、頭をポンポンと撫でられた。
「ごめんな、ミヤ。せっかくいろいろしてくれたのに」
「あ、いや…謝らないでよ…」
なんと返事をしたらいいのかわからなくて、口篭って俯くと可愛らしい魚の絵の描いたクッキーが視界に飛び込んできた。
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