即興曲 既に傷はほぼ塞がったものの、生命力そのものが底をつきかけたカインの療養は、件の誰も知らない一夜から半月が過ぎた今でも続いていた。カイン自身の実感では、よほどの無理さえしなければ怪我をする以前の生活に戻れるほどに回復しているのだが、フィガロにはまだ日中もベッドで過ごすように言われている。正直なところ、カインは既にうんざりしている。仲間たちがいろいろな気晴らしを持ってきてくれるが、生来の気質というものがあるのだ。カードゲームに何時間も興じるより、一周だけでも魔法舎の庭を走った方がカインの気は晴れるだろう。
それに、きっと忙しくしているアーサーが心配だった。大切な会議を控え、彼はきっと無理をしているに違いなかった。それにひきかえ自分はというと十分に回復した体で一日中寝転んで、何の役にも立つことができない。考えても仕方がないのはわかっているが、その不甲斐なさに幾度もため息が出た。
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