地獄でなぜ悪い マトリフは暗い天井を見上げる。落ちてきたときも思ったが、ここは随分と深いようだ。
視線を前方へやれば、また先の見えない道が続いている。ぽつりぽつりと蝋燭が灯っているが、その頼りない明かりでは遠くまでは見えなかった。
「大魔道士?」
懐かしい声に振り返れば、驚愕の表情を浮かべたガンガディアがいた。マトリフは小さく手を上げる。
「よぉ」
「何故ここに」
ガンガディアは怒ったようにマトリフに駆け寄ってきた。そのまま身体を掴まれる。思わず痛みを予測したが、そんなものは当然にない。もう死んでいるからだ。
「何故って、オレはクズ野郎なんでね。地獄がふさわしいだろ?」
マトリフはあたりを見渡す。ここが地獄らしいが、案外地味だった。もっと不気味で恐ろしい場所を想像していたのに。
1740