喧嘩して嫌いって言ったら記憶喪失になった話声にならない声を上げて静かに泣いている。
校内のざわめきから離れて、驚くほど静かな中庭の隅。
同じ寮のローブを着たツートンカラーの髪の人がベンチに座って静かに目に涙をためていた。
初対面の人だけど僕は目を離せず彼を見つめた。
しばらく立ちすくんでいると僕に気づきこちらを見た。
僕を見て目を見開くと、指で目頭を抑え俯いた。
「あの……すいません。邪魔しちゃって」
「……。いや、いい。少し長居をしすぎたようだ」
彼はポケットからうさぎ柄のハンカチを取り出すと目元を拭った。
ハンカチをポケットに仕舞うと静かに立ち上げった。
どんな言葉をかければいいかわからなかったけど、何も言わなければ彼はここを直ぐに立ち去ると思った。
「ここによく来るんですか?」
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