私の大切なもの「リナリー、誕生日おめでとう」
「何か欲しいものはないかい?今日までの分、いっぱいお祝いしようね」
優しい声と眼差しが私に向けられる。
数年ぶりに会った兄さんは、随分と大人っぽくなった気がする。いや、私がそうさせてしまったのかもしれない。
「私の、欲しいものはーーー」
ゆっくりと口を開く。
ガタンゴトンガタンゴトン。
リナリーは、列車に揺られたまま、静かに目を開ける。いつもの怖い夢でなくてよかった。さっきまで見ていたのは懐かしい記憶だ。恐らく、今日が誕生日だから思い出したのかもしれない。
出発前、「リナリーー!!!誕生日なのにごめんねぇぇ」と兄さんが泣きついてきた。
それほど遠方ではないものの、1週間程度は時間を要する。たまたま誕生日とぶつかっただけだ。「任務だから仕方ないわ」と兄を宥めすかす。
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