手紙文字を書き連ねては、丸めて捨てた。
また別の単語を並べて、結局くしゃくしゃと丸めて、捨てた。
何枚無駄にしただろう。
紙は貴重で、そう簡単にくしゃくしゃと丸めて捨てれるものではないのだが、最近凡人になったばかりのその男は、ものは使えばなくなるという感覚がいまいち掴めていない。
目の前の紙きれに向いていた視線が宙に向かう。
何かを見ている訳では無い。
その頭の中ではたくさんの単語が引き出しから取り出され、これは違う、これも違うと、言葉が散らかっていた。
あの明るい髪の恋人に
何かを伝えたい
そう思ったのに。
この気持ちはなんだろうと、筆を持った手は止まったまま。
あいしてる? そうだけど、何かが違う。
ありがとう? …それだけでもない。
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