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    葵(緒都)

    @ng2i5

    FGOの小次ぐだ♀が7年間ずっと大好きな人。小次ぐだ♀が幸せならそれでいい…
    1%の確率で他鯖ぐだ♀とかも書くかもしれない

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    葵(緒都)

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    小次郎がぐだ子の服を脱がしたり着せたりする話
    小次ぐだ♀

    二人きりのお遊戯会「最近それを着ていることが増えたな」
    「え?」
    「それ」
    今まさに着ている礼装を指さされて、そんなにしょっちゅう着ているだろうか…と首を傾げる。まあ、確かに…新しく手に入った礼装はいわゆる”練度”的なものをあげないといけないので…着る頻度はものすごく多くなるかもしれないけど。
    「あ、もしかして見ている側としてはつまらないですか」
    「ん?いや、そうではなく…」
    「…それともやっぱり似合わないとか?」
    「そうでもなく、だ。…なにやらこう…ずいぶんと着込んでいるように見えるのでな。動きづらそうに見えるのだよ。いつもの礼装に比べたら」
    ハロウィン・ロイヤリティはハロウィンイベントの時に手に入ったものだ。もうとっくにその時期は過ぎてしまったけれど、なんだかんだ気に入ってもいるのでつい着てしまう。青い上着に腰のあたりから出ている、後ろでひらひらするレース。王冠にバッジにと色々装飾も多く、見ている側としては確かに動きづらそうに見えるのかも。実際着ているわたしはそこまで動きにくいとは思わないが、もしかしたら気を遣わせてしまっているのかもしれない。
    「小次郎から見たら確かに着こんでいるように見えるかもしれないけど…意外と動きやすいよ」
    「そうなのか?」
    「うん」
    鏡の前でくるくると回ってみせるも、どうにも彼は首をひねる。小次郎いわく、特に上着が分厚そうで、動きにくく見えるんだとか。
    「…じゃあ違うの着た方がいい?」
    「肩が凝りそうだなぁ」
    「凝らないよ。ていうかこの礼装着ていると”わぁ!マスター王子様みたいですね♡”って言われて姫抱っこもしちゃうぐらいなんだから」
    「ははぁ。その礼装を着ている立香は男装の麗人であったか」
    あまり興味なさそうに話す小次郎にむぅと頬を膨らませ、この礼装を着ているともっぱら女の子にモテモテである ということを力説してみるも、やっぱり面白くなさそうに話を聞いている。…いや、これは話を聞いているというよりは…どちらかというとよくある、”右から聞いて左に聞き流している”というやつのような気もする。
    「…話聞いてる?」
    「三割ぐらいは」
    「三割ってそれほとんど聞いてないじゃん」
    「まあまあいいではないか。それよりも、その礼装は脱ぎにくそうでもあるなぁ」
    「これ?…まあ確かに、着るのも脱ぐのも大変だけど…」
    「恋仲のおなごがそれを着て女にモテているなどと聞いても、私はあまり面白くない。…出来れば今すぐ脱がしてやりたいところなのだが…はて。なかなかに手ごわそうな衣服だなぁ」
    「…。もしかして、嫉妬してます?」
    「…少しな」
    …どうやらわたしがこの礼装を着てモテモテなのが面白くないらしい。…どういう意味で面白くないのかは正直気になるところでもあるけど、まさか「脱がしてやりたい」とまで言われるとは思わなかった。反射的にサッと腕で自分の身体を抱きしめると小次郎はじりじりと距離を詰めてきて、その行動に先ほどの言葉はお遊びでも冗談でもなく、本気だったということに少々驚く。
    「…本気で身ぐるみ剥がしたい感じ?」
    「ははは。人聞きの悪い。それでは追剥のようではないか」
    「…じゃあ、そんなに面白くないなら、さ。…脱がしてみる?」
    「ほう。意外と積極的だな」
    「だって小次郎が嫉妬してるなんてめったにないことだもん。…だったらわたしだってもう少し、そんな小次郎を堪能したいでしょ?」
    「おお。これはこれは。いつの間にそんな悪い女になったのか。…私を弄ぼうなぞ立香にはまだ早いと思うが」
    一段と低くなった声に背筋がゾクゾクとするも、いつも弄ばれる側なのでたまにはわたしだってそんな事をしてみたいのである。…まあ、実際に小次郎のことを弄べるかどうかは、分からないけど。
    (知らない間に手のひらの上で転がされているんだもんなぁ…)
    にじり寄る体に気圧されて、自然とベッドへ腰かけるわたしに合わせ、小次郎もスッと隣に腰かける。胸元のリボンに触れる指先にドキドキしつつも、まだ本格的に脱がされていないのだからこんなところで緊張もしていられない。グッと顎を引いて微笑む瞳をジッと見つめれば、するりと、リボンが解かれた。ある意味でこれは、遊戯の始まりの合図…と言えるだろう。
    「…ヒントぐらいはくれるのだろう?」
    「教えない」
    「…はぁ…。これは手厳しいな」
    ヒントなんて与えてしまったら勘のいい小次郎はきっとすぐにわかってしまう。だからわたしからは何も言うことはない。…何もされない限りは、彼が有利になることを言うつもりはないのだ。
    「…頑張って」
    「ふ、たまにはこういう趣向も良いものだな。ああ、そうだ。…顔には出すなよ?立香はすぐに表情に出るからな」
    「そこは…努力します」
    なんて言いつつ、実はすでにブラウスのボタンを外されていることに焦っているなど。…バレてなければいいけど。ちらり。丁寧にボタンを外していく小次郎を見つめれば、お得意の片目を閉じたウィンクの状態で微笑みかけられて、焦っていたのがバレてしまったか…と少しばかり悔しい。なのでせめて顔は見られないようにプイッとそらせば、くつくつと笑っているような声が聞こえる。きっとわたしのこの些細な抵抗だって、彼にとっては想定内のことなんだろう。ボタンが外れるとこまで開かれると、衣擦れの音と共に、出てきた素肌を冷たい風が撫でた。
    「ふむ。上を脱がすのは手がかかりそうだな。先に下を脱がした方が良いか」
    「えっ」
    「なにか?」
    「下も、脱がすんですか…」
    「脱がしてみろと言ったのはそちらだろう?」
    「……」
    そこまで全く考えがいっていなかった。というか、この礼装の一番脱がすのが大変な部分って上だけじゃない?下はタイツだけなのに…まさかこっちまで含まれているとは思わなかった。
    (…考えている間に、手が進んでくるし…)
    上品な青い上着の、その下にある真っ白いブラウス型のスカート。その中に無骨な手がするすると入り込んできて、ねっとりと太ももを撫でながら、堪能するように指先が足の付け根にたどり着く。
    「っ、」
    「…身体が固くなっているな」
    耳元で低い声で囁かれると、背筋がゾクゾクとする。ふっと吐息がかかると全身から力が抜けそうになり、それでもガチガチに強張った体はなかなか緩まない。そんなわたしを察してか、スカートの中に入り込んだ手のひらは足の付け根と太ももを往復しながら、ゆったりと何度も撫でまわす。いちいちヒクヒクと反応してしまう体が嫌になるが、これはもう本能的な部分なので仕方ない。せめて大きく身体が跳ねないように意識を集中していれば、耳元に近づいた唇が、優しく耳たぶを甘噛みする。
    「ん、」
    「ふ、もう少し力は抜かんと、疲労してしまうぞ?」
    くすくすと笑う声は一度離れるとにじり寄ってまた近づき、触れ合う足が、とても熱い。下を向くわたしの顎を掬った彼はやんわり唇を奪い、足の付け根を撫でていた指先が、いよいよ腰にたどり着いた。
    「っんぅ…」
    「…、」
    その瞬間反射的に開いた口の中に小次郎の舌先が潜り込み、深く口づけながら指先はタイツの裾をグッと引き下ろす。しかし腰かけているせいでそれも途中までしかいかないようで、そのことにホッと安堵しつつ、身を捩る。ちゅ と可愛らしい音を立てて離れた唇は仕方ないというようにぺろりと唇を舐め、油断していたわたしの身体を、いともたやすく後ろに引き倒した。ぐわっと視界が揺れたと思いきや穿いていたはずのタイツが、もう膝のあたりまで下げられていて、今この一瞬の間に何があったのか全く分からない。
    「え、あっ な…!」
    「隙だらけだなぁ」
    ふふ、と小さく笑う声は、いつものように慣れた手つきで足先からするするとタイツを脱がし、抜け殻になったそれを、ぽとりとベッドの下に落ちていくのを見届けてしまう。慌ててスカートを押さえて起き上がろうとすると跨るように小次郎はこちらを見下ろし、囲うように降りた腕に、もう逃げ場がないと気づく。しかし焦る気持ちとは裏腹にドキドキと高鳴る胸も感じていて、どこかでこうなるのを期待していた自分が、いやらしくて嫌いだった。
    「……」
    「そう嫌そうな顔をしなくても良かろうに。…ああそれとも…男装の麗人ならば女を暴かれるのはお嫌いかな?」
    「…小次郎のそういう煽り、きらい」
    「お気に召さぬか」
    「…男装の麗人じゃないですし」
    「ほう?」
    「…ちょっとイケてるかっこうした女の子のつもり」
    「…ふ、なんだそれは。立香はたまに、よく分からぬ面白いことを言う」
    わたしの言葉にきょとんとした小次郎は本当に面白そうにくつくつと笑い、脱がし途中だった上着の方へと、腕を伸ばす。開いたブラウスから覗く素肌を撫でたと思いきやゆっくりと指先は下り、腰で止めてある黒いベルトをなぞるように撫でる。まずはこれを外さないと意味がないと気づいたのか、これまた慣れた手つきでベルトを外す小次郎を見つめて、この人は本当になんでも器用だなぁと、どこか他人事のように考えた。
    「小次郎って、ベルト付けてないのに、なんでそんなに簡単に外せるの?」
    「…は?」
    「え、」
    「…本気で言っているのか…?」
    「な、なんで?」
    「普段からベルトのついている服を着ているのはどこの誰だった?」
    「……あ」
    「こんなものとっくに慣れてしまったよ」
    指先で弾くようにベルトを外した彼は青い上着を開いてこちらをじっと見下ろし、再び白いブラウスのボタンにそっと触れる。この服の構造上、おそらく上着を脱がしたいのならこの斜めがけの赤と白のたすき…のようなものをどうにかしなければならないし、それ以外にも、肩から出た紐が左右で繋がっているので、これもどうにかしなければならない。…たぶんこの先が、脱がすのが一番大変なところだろう。
    「…ベルトは慣れたけど、他は慣れない…?」
    「そうさなぁ…どうなっているんだ、この衣服は」
    「さぁ…」
    「こんな事ならば立香が着替えているとき、気を遣わずに見ておけばよかったなぁ」
    「…。じゃあ先に手袋脱がしたら?」
    困ったように声をあげる姿を見るとほんのちょっとだけ…かわいそうだとも思い、真っ白い手袋をした手のひらを差し出して、どうぞ と微笑む。たぶん彼的には癪に触っているのだろうけど…とはいえ分からないのなら、今はわたしの言う通り手袋を脱がすぐらいしか出来ないだろう。ぎゅっと右手を握られると指先から布地を引っ張られ、脱皮して皮がむけるように、するん と、いとも容易く脱がされてしまった。
    「はい。左手」
    「う~む…想像していた展開と違うようになってしまったな…」
    「あ、今わたしが逆に主導権握っているから?」
    「はぁ…本当ならば恥ずかしがる立香を煽るはずだったのだが…」
    「じゃあやめる?やめてもいいよ」
    「いや。やめるとは言っていない。そも、やめてしまったらまたこの服で行くのだろう?それは困る。また立香が他の者たちに甘やかされている様を、後ろから見つめていろというのか?」
    「…別に、そこまで言うならもういっそのこと”俺の女に触るな”ぐらい言って欲しいけどね…」
    「いやぁ…さしもの私もそこまでの気概は…。カルデアの中の者でないのなら、存分にそのようなこといくらでも言えるのだが」
    「えー…本当かな…」
    小次郎がわたしに対してそのように激高しているところを見たことがないので、いざ嬉しいはずのことを言葉で聞いても信じられない。絶対そんなことになっても、彼は冷静に対処すると思う。
    「ふ、これでも堪えている方だ。本当ならば立香が他の者たちに囲まれた時、腕を引いて肩を抱いてやりたいぐらいだ」
    「…。じゃあ、今度そうしてよ…」
    「ヒントをくれたら考えてやらんこともない」
    …そう来たか。唇を尖らせて少しでも、甘えたことを言ったのが間違いだった。彼の言葉にグッと顎を引くと、見下ろしている瞳が楽しそうに細くなって、してやったり と薄い唇が口角をあげる。一回あんなことを言ってしまったら本当にそういうことをして欲しくなってしまうので…「ヒントをくれたら」の言葉を見逃すことも出来ない。正直なところそういう少女漫画的な展開、ちょっとだけ憧れている。
    「ぅ~…じゃあ、ヒント…?」
    「どのようなヒントを与えるのかは其方に任せよう」
    「…。ボタン」
    「ボタン?」
    「以上」
    「…けちくさいな…」
    「あとは教えない」
    つんとそっぽを向くとやれやれとため息をついた小次郎が、視線をそらしてしばし考えこむ。待っている間暇だったので前に垂れている彼の髪の毛を弄っていれば、僅かにスカートの中に潜り込んでいた指先が、ぎゅっと太ももを抓る。考え事の邪魔だとでもいうつもりなのか、仕方なくわたしは腕を投げ出して、ぼーっと真っ白い天井を見上げた。
    「…小次郎?」
    「まあ、しばし待て」
    何か思いついたように少しだけ覆いかぶさってきた彼は肩のあたりにもぞもぞと触れて、左右に繋がっている紐が、外せないことをチェックする。すると今度は青い上着に繋がっている赤と白のたすきの部分をチェックして、右側の上着に繋がっている部分が、取り外しできることに感づいたようだ。
    「む。ここか」
    「あ~…バレちゃった」
    「しかし面倒な服の構造だなぁ…」
    「それはわたしもそう思う」
    「やはりこう言うのはすぐ脱がせんと熱が冷める」
    「…じゃあ今も冷めた?」
    「いいや」
    それはない。ときっぱり答える声に、そう…という返事しか出来ない。ぷちぷちと小さいボタンを外して繋がっていた部分をまた一つ外せば、先ほどよりも青い上着がガバッと開く。しかし脱がすことを考えたらまだまだ程遠いところなので、小次郎はまた首をひねって考え出した。あとはこの、肩に繋がっている黄色い紐を外せば完璧に脱がせるのだけど…ここは実は、わたしも外し方が分からない。というのも意外とずぼらなので…ある程度脱ぎ着出来るようになったら、そのまま脱いだり着たりしてしまうからなのである。
    (またヒント聞かれたら答えられないな…。まあもう答えないけど…)
    さて、彼はこの後どうするんだろうか。まだ首をひねって考えるのか。それとも諦めるのか、ヒントを求めるのか。どれなのかはわからないけれど…どうせなら早く、このお遊びが終わって欲しいと思う。…少し飽きてきてしまった。
    「…」
    「小次郎…わっ」
    「あとは肩から脱がすしかないな。ほら、腕を引き抜け」
    「え……やだ…」
    「いやだではなく」
    まさか小次郎もずぼらだったとは。いや、ずぼらというよりこの場合…この先は諦めたという解釈の方が正しいだろうか。いきなり起き上がらせられたと思ったら袖を掴まれて、腕を引き抜けと言われてしまうとは。咄嗟に「いやだ」と言ったわたしは言葉通り、じりじりとこちらに寄ってくる彼から距離をとるため、ベッドの上を慎重に奥へと移動する。自分の身体を守るように腕で抱きしめて移動していると、しばらく地味な追いかけっこをした後、とうとう堪忍袋の緒が切れた小次郎が、わたしの片足をひょいと掬う。反射的にスカートを押さえると両腕が塞がってしまい、バランスを崩してベッドに倒れ込んでしまった。ボフッと軽い音がするとふわっと広がったスカートが捲れそうになり、しかし押さえていたのでどうにかそれは難を逃れる。けれどもいつまでも片足を掴む小次郎は全く離してくれる気配がなく、そろそろ終わってもいいんじゃないかと、声をかけようとしたその瞬間。彼は薄く開いた口で、足首に軽く歯を立てた。
    「ぅ、」
    「往生際の悪い」
    「だって、さ…」
    「これは”ゲーム”なんだろう?ならば、負けた方は大人しく言うことを聞かねば」
    「まだ、負けていないし」
    「ほう。これは私なりの恩情だったのだが…一糸纏わぬ姿にまでしなければ勝ち負けは決められぬか?ならばここから先は本当に追剥のような事をすることになるが?」
    「え、あ いやっそれは…そこまでは…」
    「ではこれで終わりだろう。ほら、上着から腕を引き抜いて」
    耳元に寄った顔は囁くように声を発し、耳にかかる吐息にまた背がぞくぞくっと震える。もうここまで来たら仕方ない。ぶっちゃけここまで脱がされたらほぼほぼわたしの負けである。やっぱりヒントなんて与えなければよかった。
    (違う礼装着ないと…)
    頭の中でそんな事を考えて、するすると上着から腕を引き抜き、白いブラウスのみになる。脱ぎ捨てられた上品なロイヤリティ礼装は小次郎が丁寧にクローゼットにかけ直して、またいつも通りの礼装を手に戻ってくる。白いブラウスさえも素肌を滑って脱がされると、身ぐるみをすべて剥がされてしまうのではないか という不安もよぎり、先ほどまで考えていたことも、どうでも良くなる。何度も小次郎と肌は重ねているが、素肌を晒すのはやっぱり…いつまで経っても慣れない。下着だけになった体を腕で隠して抱き締めれば、細くなった瞳が感嘆の息を漏らした。
    「腕が邪魔だな。上着が着られないだろう」
    「…じ、自分で着るからいいよ…」
    「ふ、立香は負けたのだろう?…ならば今だけは…いうことを聞いてもらわねば」
    笑いながら話す言葉を聞き、いつも言うことなんて聞いているじゃないか。と文句を言いたい気持ちを堪る。大人しく腕を避けると、一応朝の時間がない瞬間だからか、そこまで彼も手を進めようとは思っていないらしい。触れてくる手つきですぐにわかる。…それが分かっただけでも、だいぶ安心できた。
    「ほら、袖に腕を通して」
    「…ん、」
    「…いい子だ」
    いい大人なのに、どうして袖に腕を通しただけでそんな褒められるのか。これでは着せ替えされている人形のようである。妙な空気感と未だドキドキする気持ちのまま、七分丈の袖からするすると腕を通せば、小次郎の指先が僅かにブラの肩ひもに触れる。くっと上に引かれると反射的にビクッと肩が揺れ、その隙を彼が見逃すわけもない。肩に触れて、着たばかりの衣服の中に手のひらが潜り込むと、さらりとした髪の毛が胸元を擦る。ブラジャーの隙間から入り込んだ細い髪の毛は包まれた乳房を柔く擦って、それがもどかしくくすぐったくて、身を捩った。首筋に触れる唇は何度も優しく食むように口づけ、衣擦れの音が、頭の中にびりびりと響く。
    「こ、こじろ…」
    それはよくない、と釘を刺すような言葉をかけるつもりが、口から出た声は昂って甘ったるい音を発していた。こんなの逆に煽っているじゃないかと焦るも、小次郎は大人しく、衣服から腕を引き抜いてそっと離れていく。名残惜しそうに指先で乳房のふくらみに触れると、その瞬間、強張っていた体からようやく力が抜けた。
    「…、」
    「…時間さえ、なければなぁ…」
    ぽつりと呟きながら着せてくれた上着のファスナーをあげていく指先は、なぜだか脱がしているときよりも色っぽく、どこか堪能するように上へと昇っていく。いつも通りの高さまで上げるとやっぱり名残惜しそうに手が離れていって、余韻に浸る間もないまま、目の前にひらりと灰色のスカートが広がる。
    「ぅ、下も…?」
    「もちろん」
    「…立った方がいい?」
    「任せるよ」
    抵抗は意味がないと思ったので、(時間もないし)もうそういうのは諦めた。そもそも上着を大人しく着せてもらった時点で抵抗もなにもない。下着しか穿いていない状態で立ち上がるのは恥ずかしいものの、座ったままではおそらく穿かせにくいだろう。この恥ずかしい時間が早く終わって欲しい気持ちもあって、わたしは意を決しておそるおそる立ち上がる。上着の裾を下に引っ張りながら待っていればフッと小さく笑う声がして、ひらりと翻ったスカートが足元を掠める。片足を持ち上げて足首をくぐるそれを見届けて、もう片方の足も、同じく持ち上げ身体をくぐる瞬間を見届ける。自分でスカートを穿くときはなんとも思わないのに、人に穿かせてもらうとなぜこうも、素肌を擦る布地に身を捩りたくなるのだろう。するすると這い上がってくる小次郎の手とスカートを見下ろして、また何かされてしまうんじゃないかと、無意識に緊張する。未だに上着の裾をぎゅうっと握りしめたままでいれば、上がってきたスカートが手に引っかかり、言われるまでもなくわたしは、仕方なく手を避けた。
    「上着、少し長いから持ち上げてくれないか」
    「…うん、」
    押さえていた裾をゆっくり持ち上げると、腰まで上がったスカートがふわりと太ももを掠め、なにもされなかったことに安堵して肩の力を抜く。ファスナーもしっかり上がって彼の手がスカートの裾を払えば、ようやくこの時間が終わったのかと、思わず胸をなでおろしてうなだれる。
    「……はぁ、」
    「そう息をつめんでも良かろう」
    「…緊張する、じゃん…」
    「なぜ?」
    「だ、だって…ていうか、そこから、避けて欲しいんです、けど…」
    スカートはもう穿かせ終わった。この恥ずかしい時間はもう終わりだ。それなのに、膝立ちぐらいの高さから見上げる彼は目の前から避けようとしない。むしろ逆に、そっと腕が足に絡みついて、これでは動くこともままならない。
    (く、くすぐったい…)
    小次郎の長い前髪が、腿を擦る。さらりと触れるそれにもじもじとしたい気持ちを堪え、早く避けて欲しくて絡みついた腕を、グイグイと押しのけようとする。しかし思ったように力が入らず、抵抗しているとも言えないほどの力加減で、まるで誘うように彼の腕に触れてしまう。
    「こ、じろう…」
    弱々しく名前を呼ぶ。すると薄く開いた足の隙間に、僅かに鼻先が潜り込んで。内腿に、ピリッとした鈍い痛みが走る。
    「あ、」
    「…ん、ここだと見えてしまうか」
    「ま、まって、ちょっと…」
    「待てない」
    耳に長い前髪をかけると、僅かに背を伸ばした小次郎がもう少し上の方へと、ゆっくり唇を押し当てる。ただでさえも短いスカートなのに邪魔くさそうにめくる手のひらは、下着の裾にまでちゃっかりと触れて、一思いに力を込めてしまえば脱がされてしまいそうな勢いだ。そんなわたしの心配をよそに彼は足の付け根近くにまた鈍い痛みを走らせて、ほんのちょっと…甘噛みもする。
    「ひ、」
    せめて腰辺りならまだましなものを、よりにもよって内腿にこれをしてくるのだから…いやらしいったらない。カァッと熱い顔で見上げる群青色の瞳を見下ろせば、いつものように熱を灯した色がぐらぐらと揺れる。けれどもそれは瞬きをした一瞬の間に消え去って、絡みついた腕も離れていくと、魔法が解けたように力が抜ける。あの衣服を脱がされた瞬間からかかっていた拘束が、ようやく解かれたような気がした。そのせいか、脱力した体は立っていることもままならず、思わずベッドにボフッと座り込んでしまった。
    「…、………」
    「此度は私の勝ち ということで」
    「………そう、ですね…」
    …正直なところそんなことどうでもいい。それよりも、さっきの一連のお遊びのせいで…腰から力が抜けてしまった。放心状態で立ち上がれずにいると小次郎はわたしの足を持ち上げてソックスまで穿かせてくれて、長いブーツをはいどうぞ。と、足元に置く。あんなことしてもう時間がないだろうに、早く靴を履いて管制室に向かわなければいけないのに…。今はそれをする気力すら湧いてこない。
    「そんなに刺激の強い遊びだったか?」
    「あ、あんなこと…されたことない から…」
    「…まあ、脱がすことはよくするが、着せることはそうそうないからなぁ…。これから毎日着せてやろうか?」
    「そんなことされたら毎日遅刻だよ…」
    「慣れてくれば早くなるかもしれんぞ?」
    「慣れるまでに時間がかかるよ…」
    はぁ、とため息をついて、ちょっと気力を取り戻したわたしはどうにかブーツを履いて立ち上がる。とはいえまだ腰から力が抜けてしまっていたせいで、少しよろめいてしまったのだけど…小次郎はそれすらも、ふわりと腕で支えてくれる。
    「ごめん、ありがとう…」
    「…しゃんとせねばな。…それとも、もどかしい”あおずけ”のせいで力が入らぬか?」
    「……。…おあずけとか、慣れていないから」
    ぼそりとそんなことを呟き彼の腕から離れ、部屋の出口に向かうと、くすくすと笑う声が後ろから聞こえる。あれはおあずけである、ということを認めてしまった自分がとても悔しいが…残念ながら本当のことなので、今も”小次郎自身”が欲しくて仕方がない。
    (切り替えなきゃ…)
    ため息をついて頬を叩けば、不思議と気持ちが引き締まる。横をスッと通り抜ける群青色をほんの少し睨めば手を差し出されて、掴まなければいいものを、わたしは結局掴んでしまう。手を繋いで誘導されるように管制室へと向かえば、中に入る前に、腕を引かれて耳元で言葉を囁かれる。
    「一日が終わったら、また、続きを」
    …こんな事を囁かれて、今日一日真面目に過ごせるはずがない。それも織り込み済みで行ったのだとしたら…小次郎はやっぱり、悪い男だと思った。
    (耳がくすぐったいよ…)
    一日が終わったらどうしようか。我慢していた分、これでもかと…たまには小次郎によがって求めてもいいのかも、しれない。そのためには、今はとにかく冷静に頑張らなければ。
    (しゃんとしろ立香)
    大きく息を吸っていつも通りを心がけ、わたしはようやく管制室への扉を開いたのだった。
    「…おはよう!みんな!」


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