「シロップ」「かんかん照り」 簓が出ているトークバラエティ番組を流しながら、細々とした家事を片付けていると、テレビから聞き慣れた騒がしい声が流れた。自分もかつてあの中にいる一人だったと言うのが今は全く信じられない。あの頃からうまく立ち回っていた簓だが、最近はより一層それを感じさせる。お題に沿ったトークを芸人が各々披露する中、一際よく回る口から軽快な言葉がスラスラと滑り出ていくが、ある一文に引っ掛かりを感じた。
「ほんで、あんまりにも暑すぎてどないしよーって考えとった時に、当時の相方が思いついたんがかき氷で~」
「……? いや、俺とちゃう! 言い出したんはお前やったやろ!」
思わずテレビに向かってツッコミをいれてしまう。簓の話すトークを聞いて、「ああそういえばそんなこともあったな」と、ついさっきまで忘れていたことすらも忘れていた、養成所に通っていた時の思い出。
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