背筋を伸ばして⑧終背筋を伸ばして⑧
『お前は王から恩寵を賜って生まれたんだよ』
『おんちょう?』
『恵みってことさ』
『めぐみ』
『平たく言えば、愛だ』
『むずかしいです、かあさま』
『ふふふ』
そう笑うと、母様は私の…ヒトとは違う、鱗と筋肉ばかりの冷たい身体を思い切り抱きしめて頬を寄せた。
『ゾラーヤス。かわいい私の娘。愛しているよ』
温かくて強い腕だった。
まるで決して破れない大きな毛布。
私を包んで、世界のあらゆる怖いものから守ってくれる、いつだって凛として強く賢い、私の母様。
その母の一面だけを、何故私は無邪気にいつまでも信じられたのだろう。
温かくても、強くても、その腕は今の私とそう変わりなく、細くてとても全ては抱えきれる筈がなかったのに。
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