キャンディ(これからのこと) 飴玉を舐めながらキスをする遊びを覚えたのは学生時代、飴玉を舐めながらフェラチオをするのを覚えたのも学生時代、けれどセックスをしながら飴玉を初めて舐めたのは、どうしてか三十を過ぎてからのことだった。
基本的に飲み食いをしながらセックスをするのは好きじゃなかったからこれは全部妥協で、個人的に好んだのは全てが終わって水を勧められたのを飲むくらいだった。中国じゃ飲み食いをしながら一日中セックスをしたんだぜと豆知識を披露されても、だからなんだという話だ。どうやら狡噛はそれがしたいらしかったが、俺はそういうのはいい。あまり風流なのは得意じゃないし、古代に想いを馳せてするセックスなんて御免被りたい。
話は戻って飴玉についてだが、なぜ今そんなことを考えているのかというと、今日、仕事中に警護対象から俺たちは飴玉をもらったからだ。それは小さな少女で、あなたたちにお駄賃ね、と彼女はスカートを揺らしながら笑っていた。彼女は事件の関係者の娘で、襲撃対象になっていたので俺たちが警護することになったのだが、考えすぎだったのか無事に家に着いた。それからしばらく公安局がやって来るまで守ったものの、公安局から事件が発生したとは聞かない。今はまだ、こう着状態にあるのだろう。
セックスを終えてベッドに寝転がっていると、狡噛がその飴玉を取り出して口に放り込んだ。そして俺にキスをした。俺甘いそれを受け取りながら唇を合わせて、また狡噛に返した。このまままた始めるんだろうかと不安になって、彼の身体をさする。俺はセックスが好きだったが、それでも怖いものはあるのだ。例えば、それが全部になってしまう感覚とか。狡噛より、セックスが好きだと思ってしまうこととか。
「養子を迎えるなら、ああいう子がいいかもしれないな」
俺に飴玉をしゃぶらせながら、狡噛がぽつりといった。俺はそんな将来設計なんて考えてもみなかったから驚いて、吐き出しそうになってしまいがり、とかじってしまった。狡噛が笑う。
「先の話だよ。全部終わって、お前と生きていく時に連れがいてもいいかもしれないと思ってさ」
狡噛が俺の髪を撫でる。俺はその可愛らしい想像を憎らしく思いながら、砕けた飴玉を舌の上に乗せた。