好きな人とお揃いにしたい。好きな人の真似がしたい。
教室の自分の席でふと思った。
教科書とノートを開いてはいるものの、先生の教えなど耳には入らない。
窓際の席からふと外を見ると隣のクラスが運動場で体育の授業をしていた。
その中に好きな人がいて目を引いた。
紫色の髪に青いメッシュ。
同じクラスの他のメンツと話をしているのだろうか。
皆何かを言っていて笑っているのがわかる。
ピアスだ
ふと自分では装飾していないが好きな人にあるものを見つけた。
右耳にしているピアス。
オレにはないなぁと自分の右耳を触る。
耳たぶを撫ぜる様に触ると同時に今日最後の授業終了の鐘がなる。
スマホを取り出し、ネット通販のページを開くと『ピアス 開ける』、このワードで検索した結果、いくつも商品が出てきたが、買うものはもう決まっている。
目当ての物を見つけると購入ページに進み、決済を完了させる。
「よし」
明日にも届くであろうものを思い少し笑みを浮かべる。
ちょうど明日は土曜日でショーが終わったあとステージの打ち合わせがある。
その時に頼もう。
「♪~」
気分よく帰り支度をしていると、隣のクラスも授業が終わったから体操着で教室に戻ろうとしている所だった。
「司くん」
廊下からオレを呼ぶ声が聞こえて手をヒラヒラ振って席から立ち廊下に近付く。
「おつかれー」
「うん、明日のショー終わってからの予定は大丈夫かな?」
「ショーの打ち合わせだろ! 楽しみだ!」
「そう」
体操着を身にまとっている類は汗の匂いがして、少しドキッとする。
「明日が楽しみだな」
「そんなにショーの打ち合わせが楽しみかい?」
「おぅ!」
笑顔で頷くと類はふふっと笑いオレの頭を撫でてくる。
「ちょっ、撫でんなよ!」
「ごめんごめん、ついね」
頭に乗っている類の手を退かすとお互い笑顔になり、顔を見合わせる。
「じゃあまた明日ね」
「おう、またなー」
ヒラヒラと手を振って見送り、自分も帰ろうと帰り支度をする為に自席に戻る。
~次の日~
ショーを終わらせたオレたちは、控え室に向かい打ち合わせをする。次々出てくるアイディアに打ち合わせは大盛り上がりで、夏に向けてのショー、びしょ濡れシャワーショーをやることになった。
準備は明日以降する事になって、夕方にはお開きになり、えむも寧々も帰って行った。
自分も帰る支度を…と、カバンを開いて今朝届いた物を見つけ取り出し、掴むと類を見る。
類も俺と同じく帰る支度をしていた。今がチャンスだ!
「な、なぁ!類!!」
「ん?どうかしたの?」
「こ、これ…やってくれ」
手に掴んでいた物を類の目の前で見せる。
「ピアッサー…?」
首を傾げながら類はピアッサーを受け取りまじまじと見る。
「そ、そうだ。今、オレにやってくれ」
「いいけど…どうしたんだい?」
「いいだろ!別に」
少し顔が熱い。
類は慣れた手つきでピアッサーをプラスチックの外装から取り出し、マジマジとみたあとオレを見てきた。
「どっちに開けるつもりだい?」
「……ぎ…みみ」
「え?」
「右耳ッ!」
類はキョトンとした後嬉しそうに笑みを浮かべてニコニコとオレの顔を見てくる。
「み、見るな!」
「うん、ごめんごめん」
謝ると類はオレの右耳の耳たぶを触り。
「右耳ね、どこら辺とか決めてる?」
「ッー類と、同じ場所っ!!」
恥ずかしくなりつい大声で言ってしまった。
そんなオレに類は笑みを浮かべて了解と言った。
「じゃあ3.2.1で開けるね」
「お、おう」
3
2
1
バチン
「はい、終わったよ」
じんわりとする耳たぶの痛みに空いちゃった。とボソッ呟くと、類にも聞こえていたみたいで、類は嬉しそうに開けたばかりのオレの右耳を撫でる。
「ねぇ、司くん」
「な、なんだよ」
「司くんってホント…」
ツンデレだよね。
さり気なく光るムーンストーンは6月の誕生石。
宝石言葉は『愛の予感・純粋な愛』