バラを投げたらワルツを踊ろう「あーもしもし伊地知いる?憂太が帰ってくる日に合わせて花束用意してくんない?もちろんバラね」
そんじゃよろしく、と一方的に締められた電話は決して留守電では無い。運転していた伊地知に変わってスマホをスピーカーに切り替えていた若い補助監督は伊地知の顔を伺う。
「明後日、ですよね?乙骨術師」
分かります、気持ち、よく分かります。怪訝な顔をした補助監督に伊地知は心の底から共感したかったが、如何せん業務中である。ごほん、とひとつだけ咳払いをするに留める。
「ええ、五条さん毎回乙骨くんを迎えに行く時に必ずバラの花束持っていきますから、明日五条さん迎えに行く途中でお店に取りに行きましょう」
「あっはい、そうなんですね!気をつけます!」
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