モス×メロ※ポケモン同士で会話しています
※ラプラスが最も古参の設定
「よくやったね!アンタはやっぱりサイコーだよ!」
「大丈夫かい!?熱かったね、よしよし」
「いつもありがとね、大好きよ」
わたしの主人メロンは、いつも私たちポケモンを可愛がってくれる。
ときに撫で、ときに抱きしめ、そしてキスをしてくれる。
バトルの前、バトルの後、トレーニングの時も。いい結果を残せたときはもちろん、あいてのこうげきにやられてひどく傷付いたときも、優しくいたわってくれる。
それは彼女の家族に対してもおなじ。
「ただいまぁ!お腹すいたかい?」
「おかえりなさい、ママ!」
「はいはい、みんな愛してるよ!」
特にまだ小さな子たちは、一日のうちになんども抱きしめてもらったり、キスをしてもらったり。
メロンからすることもあれば、子どもたちが甘えてせがんでくる事もある。
「ママ、だっこして!」
「ママだいすき、ちゅー」
にんげんの子どもは、メロンと言葉をかわせる。私たちポケモンも、にんげんと少しはこみゅにけーしょん、がとれる。
コオリッポは頭をすりすりと擦り付けるし、ラプラスなんかはメロンと過ごした時間が長いから、その首を少し傾けるだけで、「なでて」のサインになっている。
……わたしだって、ラプラスほどじゃないけれど、メロンと過ごした時間が長いのに。
一日を終えた夜、ラプラスはボールに戻る前に首を少し下げて「撫でて」と無言でアピールする。
でもその夜は、ちら、とメロンを横目(というか流し目、ラプラスはとてもいろっぽいから)で見ただけでつたわったらしい。
「はいはい、おやすみ」
メロンはわしわしとラプラスの首を撫でてから、小さな音を立てて頬にキスした。
ラプラスがボールに戻った後、わたしは薄い羽を必死に動かしてメロンの背に追いついた。
ちなみにわたしは、ラプラスよりかは長くボールの外に出してもらえることが多い。ラプラスは大きいし、わたしは小さいから、にんげんであるメロンのそばにいられる時間はけっこう長いのだ。
……それなのに。
「どうしたんだい、モスノウ?」
ふりむいたメロンの顔はとてもやさしかった。きょうは一日バトルがおおくて、わたしもメロンも疲れていたけれど、わたしたちや家族と話すときは、ぱっと笑顔になってくれる。
だいすきなメロン。
わたしはせいいっぱいのきもちを込めてうったえた。
(メロン、わたしも、わたしにも、キスして!)
でもわたしにできることは、人間のことばにならないなき声を発することと、薄い羽をふわふわいわせることだけだった。
「…!……!!」
メロンはふふ、と笑うと、
「早く寝ないと、疲れちゃうよ?さ、」
ボールを取り出した。
(いや、まだ戻りたくない!わたしだって貴女に甘えたい!)
ふわふわ、きゅうきゅう。
羽ばたいてメロンの髪に、肩に、指先に触れる。
それでも私のひっしの訴えは、メロンにつたわらなかった。
メロンはおかしそうに笑った。
「どうしたんだい、まったく」
メロン。
笑っているけど、そろそろ疲れてきた。どんな時も明るい彼女のことをずっと見てきたから、わかる。
メロンの方こそ早く寝かせてあげないと。
「おやすみ、モスノウ」
(うん……おやすみなさい)
私は素直にボールに戻った。
ボールに戻されたわたしたちは、他のポケモンの入ったボールと並べられる。
場所は2階の窓のよこで、だいすきなキルクスタウンの雪景色がよく見えるところ。
メロンの手でわたしのボールは所定のばしょに戻された。
すると、みんなが迎えてくれた。
(遅かったじゃん、モスノウ)
と、ヒヒダルマ。
(ただいま、みんな)
他の何匹かは寝ていて、もう何匹かは、まだ起きているか、うとうとしてるみたい。
(やれやれ。あたしゃもう寝るからね)
と、コオリッポ。
四角い頭を腕にうめて、寝るたいせいになっている。
すやすやとした寝息を立てるなかまもいる。
窓の外を見ると、星がきらきらしていた。街のあかりも消えてしまったということ、夜とても遅いということだ。
にんげんや、昼間にかつどうすることがとくいなポケモンは、ねむる時間。メロンも他のみんなもねむる時間。
わたしはほんらいなら、夜にもかつどうできるポケモンらしい。だからまだ起きていられるのだけど。
さびしい気持ちでずきずきするこころを抱えたまま、起きていたくない。わたしももう寝ようかな。
そう思って瞳をぱちりと閉じたときだった。
(おかえり、モスノウ)
(ラプラス?)
ささやきかけるような、おちついた声。隣のボールからラプラスが話しかけてきた。
ヒヒダルマやコオリッポはもう寝てしまったみたい。ほかの子を起こさないように気を付けているのだ。いちばん年長でかしこい彼女らしい。
(メロンと何か話した?)
じ、と見つめてくる。
どき。
ラプラスはほんとうに頭がいいし、わたしやメロンと付き合いがながいから、私のもやもやしたきもちを察したのかもしれない。
(うぅん、べつに……)
(あら、何も話さなかったの?)
話さなかったわけじゃない、話せなかったんだ。というか、いちにちの終わりに何も話さないなんてことはなかった。ただ単にひていしたかっただけなのに、なんだかムキになってしまう。
(そ、そんなことない!)
(し、ほかの子が起きるわ)
(ご、ごめん)
ずい、とラプラスはボールの中でわたしとのきょりを詰めてくる。
(素直におなりよ、何かあったのかい?)
う…。ラプラスには分かってしまうのかもしれない。