連れてきちゃった「教官にいい考えがある!」
ちょっと待っててね!愛弟子!と言ってウツシ教官はその場を離れた。
こういう時は大抵操竜したモンスターと共に戻ってくる。フィオレーネさんやジェイさんたちのような盟勇とクエストを行う時はいつもそうだった。狩場にいるモンスターを一体、操竜して帰ってくる。きっと今回もそうなんだろう。まして操竜の達人である教官だから、首尾よく連れてきてくれるに違いない。そう思って、俺はジンオウガの注意を引いていた。すると。
「おまたせ!愛弟子!」
案の定、ナルガクルガを操って教官はすぐ戻ってきた。久々に教官の操竜を見たな、やっぱりかっこいいな、なんて見とれていたら思わぬ一言がふってきた。
「あとおみやげだよ!」
おみやげ?と不思議に思った時、うしろからリオレイアがやって来たのが見えた。もしかして…。
「うん!折角だったからね、連れてきちゃった」
愛弟子の操竜見たいからね!俺が終わったら今度は愛弟子の番だよ!と嬉しそうに教官は言った。
折角だから、とついで感覚で連れてきていいものじゃない気がするし、一体どうやってここまで2体連れてきたんだろうとか疑問に思うことはいっぱいあるけど、とにかくすごい。
2人でジンオウガを狩猟した帰り道、操竜の話をしたら、教官は得意げな顔を見せた。
「ふふ、教官だからね!これくらいは朝飯前さ!」
君の教官だって、すごいんだよ!と教官は胸をはった。
「アルロー教官も凄いけれど、カムラの里の君の教官のことも、忘れないでね」
俺の顔をのぞき込みながら言う教官の目は、すこし寂しげだった。
意外だった。教官は俺を快くエルガドの拠点へ送り出してくれた人だけど、寂しくも思っていたようだ。
すこしおかしくなってしまって、俺はふふ、と笑ってしまった。
「すみません、なんだかおかしくて」
「え!?今俺、なにかおかしなこと言ったかい?」
「いえ。教官の教えが今の俺を作っているので、忘れるなんてあるわけないのになって思って」
里から離れたって、新しい教官に出会ったって、狩猟の全てを、外の世界の広さを、教えてくれた人を忘れるものか。
心配しなくても大丈夫ですよ、と安心して欲しかったのだけど、教官は安心するどころか、みるみるうちに顔が赤くなっていった。今まで見た事ない教官の顔だ。俺はなにか変なことを言っただろうか…。
「あ…あはっ、そ、そっか〜!うんうん!良かった〜!そうだよね!君は俺の教えをどんどん吸収して成長したんだもの!基礎を忘れないのは大事だ!偉いぞ愛弟子よ!」
これからの君の成長も楽しみにしているよ!また間近で見たいなあ!といつもよりも大きな声で教官はまくし立てた。
はい、また教官とご一緒させてください。まだまだ、俺は教官に教えていただきたいことがいっぱいあります。と伝えたら、満面の笑みで了承してくれた。
「よぉし!それじゃ、今度は2体連れて操竜する方法を教えよう!他のハンターと一緒にいっぱい操竜するんだよ!」
「えっ、は、はい」
おしまい