小雨がしとしとと町を包み込むような日の事だ。
薄汚い路地の壁は雨に濡れ色を濃くし、薄いシャツ越しにジットリとその湿気を伝えてくる。
弾む息を抑え、ズキズキと痛みを訴える体を無視して何処か逃げれる場所は無いかと必死に頭をめぐらせるも壁は高く隙間も無い。
「おら!もう逃げらんねぇぞっ」
「ちょこまか小賢しいったらありゃしねえ!……金輪際こんな事できないようにしてやんねぇとなあ」
「……!!」
後ろは壁、前にはガラの悪い男が数人、手には棒や剣を持ち、たかがこそ泥の子供一人を追い詰めるには物騒な出で立ちでにじり寄ってくる。
雨が落ちる路地は狭く逃げ道は無い。
背に感じる壁の冷たさに、腕に抱える風呂敷袋をギュッと抱き締めれば、呆れた笑いが男たちから漏れた。
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