北まこ朝起きると、遊木がいなくなっていた。
昨夜一緒に床に入り、その存在をこの手でしっかりと確かめたはずなのに、今はただ、遊木がいたはずの場所に残されたベッドシーツのしわだけが、カーテンから漏れる朝の光に静かに照らされていた。
まずい、と思った。
冬の冷たい空気を億劫に思うのも忘れ、布団を投げ出すようにがばりと勢いよく起き上がる。咄嗟に、ゆうき、と名前を呼びかけてみたが、しんと静まり返った寝室に自分の掠れた声が沈むように響いただけで、どこを見渡しても遊木らしき姿を見つけることはできなかった。
冷水を浴びせられたみたいに、まどろんでいた思考が一気に覚醒していく。あいつは早起きな方ではない。いつも俺が起こそうと声をかけたって、「あと少し」と言って布団をかぶり直すようなやつだ。遊木に朝イチで仕事が入っているときには、俺の知らないうちに起き出して出かけていることもあるが、電子機器がいまだに得意ではない俺を気遣ってか、そういうときにはいつもメールではなく、ベッド脇に「先に出かけている」といった旨のメモ書きが置かれていた。
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