世界にはふたりきり 降り始めは、ぱらぱらとした空に晴れ間が覗く、天気雨だった。
梅雨に入ったばかりであるが雨もそこまで多くなく、しかし雨の気配の湿気は日々増していた。帰りのホームルームで、窓の外を眺めていた悠仁は雨の降り出しを目撃し、帰るまでは止むかなぁ、と思っていた。
しかしその願いに反し、雨足はだんだんと強くなり、家に帰り着く頃には曇天が空を覆い、無数の雨粒を降り注がせていた。
「うっわ、土砂降り!」
自宅の玄関先の庇に着いた途端、バケツをひっくり返したような雨になり、悠仁は通学鞄にしているリュックから鍵を探りながら背後を振り返る。
「喧しい。早く鍵を開けろ、この愚弟が」
その隣では傘を畳んでいる双子の兄が、不機嫌そうに命令してくる。
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