プロシュートのマンモーニ陥落計画きっかけは、なんだったっけ。
そうだ。街で美人からナンパされた兄貴を見て、
「流石プロシュート兄貴!あんな美人から声かけられるなんて!オイラだったら絶対ありえないですぜ!」
と、いつものように兄貴に日常会話の一つで軽く言ったこの言葉がことの始まりだったと思う。
褒められたはずの兄貴が何故か眉間に皺寄せ、
「ペッシペッシペッシペッシよォー!まだオメーはそんな事気にしてンのか?いいか、オメーは良い素材を持ってんだ。自信を待て。あとはその心の弱さを克服しなきゃいけねーな!」
とペッシの頬や後頭部を撫でながら叱咤激励の言葉を浴びせる。
しかし自分の見た目など、自分が一番、嫌というほどにわかっている。
だからこそ兄貴からの言葉でも納得できず、自信も持てない。
そんなペッシの姿を見て、プロシュートはさも今思いだしたかのように言い出した
「そういやオメー、バーチョもしたことねぇって言ってたな。いつかオメーが女引っかけてもテクニックのない奴は舐められる…
だからよペッシ…俺がオメーの兄貴分として責任持って実践練習トコトン付き合ってやるッ」
と、力強い兄貴の言葉に終着し今に至るのであった。
「じゃあペッシ、今日は昨日のおさらいだ。教えたことを思い出しながら、俺にピクニックキスしてみろ。」
兄貴にはあの日から今までにいろんなキスを教えてもらった。てっきり、だれか女を見繕って練習するのかと思ったらまさかの練習相手は兄貴だったのは驚いた!
「慣れてないのにいきなり女で練習だなんて、どの口が言うんだ?」と叱られたのも記憶に新しい。
たしかにそうだよなぁ。兄貴の言う通りだ。
じゃあマネキンとか?という考えも、オメーの未来の女は死人なのか?と詰め寄られ却下。
「でも、オイラのキス練習のために兄貴に練習台になってもらうなんて申し訳ないですぜ!」
「気にするなペッシ。これはオメーの教育係として俺が責任持ってこう言う面も育ててやりてェと思ったからだ。他のヤローなら御免だが、ペッシ!オメーだからこそ、俺は自分の身をもってして教えたい。この意味わかるよな?え?」
わ、わかったよ兄ィ‼︎‼︎と兄貴の思いに心打たれ、了承したのが運の尽き。
毎朝、仕事前に兄貴とキスの練習時間が始まった。
兄貴とは恋人関係でもないのに、兄貴とキスする不思議な時間。
兄貴は、仕事も出来てその上あのカッコ良さだ。惚れない方がおかしいんじゃないかって思う。もちろん尊敬の気持ちは今までもずっと持ってた!でも恋心じゃない!
だけど、あんな恋人みたいなキスを毎日してたら勘違いしちまいそうになったっておかしくないだろ?
まるで、自分があのプロシュート兄貴の恋人みたいだなんて……夢見たいな…
まぁ、つまり、何が言いたいかって言うとオレは兄貴とのキスレッスンの中で、兄貴に恋愛感情を持っちまったってことだ。
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ピクニックキスとは口を開いた状態で舌を出し、お互いの唇を合わせないようにして、舌先だけでするキス。
兄貴とのキスレッスンは、1日目に兄貴からキスされ仕方を学ばせる。
そして翌日にペッシから学んだことを実践するキス。そのキスの、赤ペン先生よろしく改善点を実践キスで教えてくれる。
三日目のテストで、前日の改善点が修正され良いと兄貴が判断した場合のみ翌日に新しいキスを教えてもらえる仕組みだ。
朝仕事前の時間の玄関。
兄貴は少し屈んでキスしやすいようにしてくれている。
ぐっと覚悟を決めて少し唇を開けて、舌を出す。
兄貴の唇から少し見える舌にちゅっと舌先を合わせた。しかしどうしても距離が近くなってしまうため、ペッシの下唇がプロシュートの唇に当たってしまった。
吐息すら届くその距離で、低く楽しげに注意する兄貴。
「オイオイペェェッシ!今日はピクニックキスだ。そんなに唇にキスしたかったのか?え?」
と上機嫌だ。
「ち、違うんだ兄貴ィ!だって、こんな近いから触れちまうのは無理ないですぜ!」
と弁明したが、「ハンッ」と鼻で笑い兄貴の目は愉しげだ。
これ絶対からかってるやつだ‼︎オイラ知ってる……
少しふてくされたペッシに、気づき
後頭部を愛おしげに撫でながら
「オメーが良い反応するからついからかっちまう。悪いな」
と優しく唇にちゅっとわざとリップ音をさせ詫びのキスをするのであった。
ずりーよ‼︎本当に兄貴はずりぃ〜!
キスの練習なのに、この時間だけは兄貴の恋人みたいで、
でもそんな妄想つらいだけだ。
今まで兄貴はこんなキスを今までどれくらいしてきたんだろう。
兄貴の過去のこと、知らないけど
きっと美人な女とだってたくさんキスしてきたに違いない。
兄ィとキスしたことのある他の誰かに嫉妬するなんて。なんておこがましい。
ペッシの集中力が逸れたのを見逃さない
「ペェェッシ!!キスの最中に考え事か?
いいか、キスの間は俺のことだけを見ろ。
オレのことだけを考えろ」
と、ペッシの首と顎の窪みにトントンと人差し指で押しながら注意する。
しっかりとそれをわからせるために
「いいか?恋人とのキスによそ見は厳禁だ。忘れるなよ」
とおでこコツンしながら囁く。
そしてペッシの両耳を左右の手で抑えるプロシュート。
何が起きるのか分からず不安になるペッシ。
今までの優しい唇にふにっとするライトなキスではなく、ペッシの口内にぐちゅりと舌を入れ深いキスをするプロシュート。
舌ごと絡め取られる。
「ンっ…ちゅ…ん〜⁉︎」
初めてのディープキスに戸惑い驚くペッシ。
鼻で呼吸すらまともに出来ず、荒くなる呼吸の中で目の前の兄貴のスーツをくしゃりと弱い力で握る。
何か支えるものがないと立っていられないほどに深いキスだったから。
スーツの皺などかまいもせずにそのままキス続行するプロシュート。
逃げ腰になるペッシが逃げられないように、ペッシの足の間に足を挟み込み、壁に追い詰める。
両耳をプロシュートに抑えられ、キスの音が、舌と舌が舐め合い、お互いの唾液が絡み合う水音が脳内に響く。
ちゅっ♡くちゅりじゅるるっ♡
壁を背にし、逃げられず唇を激しく大好きな兄貴に愛され自身の股間には兄貴の足がある。
これだけの凄まじいキスなだけでも、興奮材料なのに、これが恋愛感情を持っている兄貴にされているのだからペッシの身体が反応してしまったのは仕方ないのである。
プロシュートはそれを分かっていながら、言葉にもしないし、指摘もしない。
満足したのか、プロシュートが唇を離した時には茹蛸、いや茹でペッシが爆誕していた。
プロシュートはデザートかのように、ペッシの頬に愛おしげにちゅっと軽いキスを送り、スーツをシワを伸ばして着直す。
「行ってくる。良い子にしてろよ?」
と。
ペッシは未だ、キスの余韻から抜け出せずほわ〜となっていたが、いつもの習慣で
「…い、いってらっしゃいあにぃ…」
と言えた。
その言葉に満足に扉を開け本日の仕事先に向かうプロシュート。
ディープキスの快感の余韻で、ずるずると床に座り込むペッシ
-あぁどうかこの恋心がプロシュート兄貴にばれませんように-
-あぁ俺のペッシ、早く堕ちてこい-
ドア越しに2人は己の唇に残る双方の体温に触れて思うのであった。