屋上にて【28♀】「サボタージュとは感心しませんね」
暖かな陽気に誘われるまま、うとうとと意識を揺蕩わせていた時だった。そよぐ風が声の主の柔らかな髪を揺らした。
「もうすぐ授業が始まってしまいますよ」
俺はその凛とした、何度聞いても飽きることの無い心地の良い声にゆっくりと目を開いて、そしてもう一度閉じた。
「王子様はの、お姫様のキスがないと起きれんのじゃ」
「それは逆ではなかったですか?」
「さて、どうじゃったかのう」
からかうように笑うと、ふわりと風が吹いて、彼女のほのかに甘いシャンプーの香りが強くなった。
「もう、仕方の無い人ですね」
冗談のつもりだったのだ。馬鹿なことを言ってないで起きてください、と言われると思っていた。しかし、実際には先程よりも近くで声が聞こえたかと思うと、唇に柔らかいものが触れて、ちゅ、と小さな音を立てて、そして離れたのだった。
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