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    12/18雨クリワンドロ「夜更かし」
    ※夜更かししてない

    #雨クリ
    raincoatClipper

    「彼は船に乗り、美しい島にたどり着きました」
     午前0時、スマートフォンを耳元に置きベッドに潜った雨彦は、穏やかな声で紡がれる物語を聞いている。

     雨彦はここ最近寝つきが悪い。おそらくは最近掃除の方が忙しく、その名残が残り続けているせいだろう。
     睡眠不足が続き、事務所で思わず欠伸をしたところを、ユニットメンバーやちょうど事務所にいたもふもふえんの3人に見られてしまった。
    「かのんね、クリスさんのお話を聞いたらよく眠れたの!だからあめひこさんもクリスさんにお話ししてもらったら眠れるかも!」
     雨彦が寝不足だと聞いた小さな先輩が名案だというように声を上げ、突如白羽の矢が立ったクリスは、何度か瞬きをした後雨彦を見た。
    「雨彦が眠れるかもしれないのであれば、試してみましょうか」
     眠れるのであればそれに越したことはない。さらに言えば、クリスと言葉を交わす時間が増えるのは、雨彦にとっては喜ばしいことだ。そんなこんなで、雨彦はクリスの申し出を受けることにした。

     クリスは事前に決めておいた時間ぴったりに電話をかけてきた。
     少しの雑談の後、クリスが選んだのは、いつもの海の話ではなく有名な航海譚を語り聞かせること。さすがの雨彦もこの歳になって寝物語を聞くことになるとは思わなかった。
    「ですが島だと思っていたそれは大きな鯨の背中で―――」
     最初こそ不思議な心地がしたが、クリスのよく通る穏やかな声に耳を傾けていると、確かに気分が安らいでいくのがわかる。こうしてクリスの声だけに意識を集中すれば、それ以外のことは何も気にならなかった。
     眠れないまま無為に過ごす夜とは違う。こんな夜であれば、このまま一晩寝付けなくても良いとすら思えた。
     だが、そんな雨彦の思いとは裏腹に、ゆっくりと眠気がやってくる。もう少しだけ聞いていたい気もするが、久しぶりにやってきた睡魔には抗えなかった。
    「……雨彦?眠ってしまいましたか?」
     ふと物語が途切れ、クリスの呼びかける声が届く。だが心地の良い眠気の中で、夢の世界に向かいつつある雨彦は、その声に答えることはできなかった。
    「おやすみなさい、雨彦。良い夢を」
     包み込むような柔らかい声が耳元に届く。
     このまま夢路にクリスが現れてくれたら良い、と考えながら、雨彦は眠りに落ちていった。
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