破れるものなら破ってみろ 夏油が幼稚園に到着して最初に思ったのは、スリッパも可愛いんだなぁ、ということだ。足のこうについた猫のぬいぐるみは、歩くたびぴょこぴょこ跳ねた。サイズは小ぶりで、夏油のかかとは少しはみでて床につく。
となりに歩いていた園長が見上げて言った。
「それにしても夏油先生はほんとうに大きいですね。エプロン、ちょっと小さかったからしら?」
ひざ丈の園長とくらべて、夏油のエプロンは股下と短いが、これで男性サイズという。不自由は感じないし、備品ならこんなものだろうと覚悟もある。
「大丈夫ですよ」
「身長は180超えでしたっけ?」
「最後に測ったときは184でした。子供たちに怖がられないといいんですけど」
「そんな大きい先生はいないから、びっくりされちゃうかもね。でも夏油先生は小さい子に好かれやすそう」
8094