かさかさ、耳元でなにかが音をたてる。違和感を覚えながら、目を開ける気にはならなかった。ぬるい温度が身体の下を温め、眠気をゆっくりと増幅させる。
微睡みの中、酷く渇きを覚えた。水、水が欲しい。小さな頃からずっとそうだ。喉が渇いてたまらない。満たされることのない渇きを抱えながらずっと生きてきた。水、と訴え続けるジャミルをたしなめ、悩ましげに話し合う両親を見て、ジャミルは己の渇きが「普通」でないことを知った。以来、両親を困らせる発言を注意深く控えるようにしてきたが、そんな両親ももういない。流行病であっけなく死んでしまった。再会した両親は、骨と灰になっていた。
親類の伝手もなく、十にも満たないうちにみなしごとなったジャミルは村長の家に引き取られたが、長の血族でもない限り、みなしごは召使いとなって生涯を終えるのが慣わしだった。
4694