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    こんぺいとう

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    こんぺいとう

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    朔唯 : 『おみくじ』
    運命 ≒ 奇跡のような偶然の確率…?

    #朔唯Webアンソロ
    先月のお題ですが、ネタが思い浮かんだので…

    #スタオケ
    #朔唯
    sowei

    微笑む運命論者と、足掻く確率論者。「…せーのっ、」

    唯の掛け声に合わせて、その手の折り畳まれた白い紙を開く。
    唯は急くように、朔夜は緩慢な動作で。
    開いた紙面をパッと覗き込み、探していた特定の“単語”をいち早く見つけた唯は、その瞳を一際輝かせた。

    「やった、大吉朔夜は」
    「大吉」

    唯に遅れてその“単語”を見つけた朔夜は、淡々と書かれた通りを告げる。
    特に何の感慨も湧かない、ただの文字。
    しかし、唯は嬉しそうに親指を立てる。

    「お、さすが相棒!これでスタオケの未来は安泰と言っても過言ではないね」
    「…それは過言だろう」

    溜め息をつきながら、朔夜はチラリと開いたおみくじを一瞥した。
    細々と書かれた文字が紙面を踊る。
    たかが紙切れに印刷されただけの文言に一喜一憂できるなんて、朔夜には正直理解できない。
    おみくじの結果で何かが変わるわけではないのに。
    こんな紙切れに人生を左右されるなんて以ての外だが。
    そんな朔夜がおみくじを引くことになったのは、言わずもがな彼女に引っ張られたから、それだけだ。

    「あ、失せ物…『出る 高い処』…朔夜から借りてたハンカチ、あそこかな…」
    「やっぱり君が持ってたのか…」
    「出産、『安し』だって」
    「…何を産むんだ、君は」
    「…待ち人は『すぐ隣に』…もう出会ってる…?」
    「……」
    「朔夜?」

    唯が読み上げるおみくじの内容に、気怠げに突っ込んでいたはずの朔夜が急に黙り込んだ。
    不思議に思った唯が顔を上げれば、朔夜はじっと自身のおみくじは凝視していた。
    困惑と驚きが入り混じったような、複雑怪奇な表情。

    「…それ、ちょっと見せてくれないか」
    「おみくじ?はい、」

    言われるがまま、唯は差し出された朔夜の手のひらにおみくじを乗せる。
    受け取ったおみくじを見つめる朔夜の視線は真剣そのもの。
    先ほどまで、おみくじに興味など微塵も無さそうだったのに。
    唯の頭上には疑問符が増すばかりだ。

    「…朔夜?」
    「…同じだ」
    「へ?」
    「おみくじの内容。全く同じことが書かれてる」

    少しだけ高揚した朔夜の声音。
    珍しい、と唯は思わず朔夜の顔をじっと見つめる。
    しかし、そんな視線も、ずいと目の前に並べられた二枚のおみくじにあっさり遮られた。
    唯は少しの不満を覚えながらも、朔夜の珍しい変化の答えを得るため、おみくじに視線を移す。
    唯の視線が、最初はゆっくり、次第に忙しなく、二枚のおみくじの間を移動する。
    二枚のおみくじに書かれた、正真正銘、一言一句違わぬ文字列。
    唯の瞳に、徐々に興奮の色が浮かぶ。

    「わ…、ほんとだ…え、待って…何これ…すごい…これ、すごいよね」
    「…こんなことあるんだな」
     
    白い息を吐き出しながら、唯は素直に、朔夜は静かに感動していた。




    「ねぇ、これって運命…」




    唯は興奮気味に朔夜を覗き込む。
    朔夜は僅かに言葉を詰まらせた。
    同じ神社の、同じおみくじを引いたのだ。
    同じ内容のおみくじが出てくることだって、“決して”“有り得ない”ことではない。



    けれど



    それは、どれだけの確率なのだろう。

    隣に立つ人物と、同じタイミングで、同じ内容のおみくじを引くことのできる、確率。




    それは、もしかして
    彼女の言う通り、




    「……偶然だよ」
    「えぇっこんなすごいことが起きたのに」
    「…運命、なんて、そんな大層なものじゃないだろ…」
    「えー…私はずっと、朔夜に運命感じてるけどな…」
    「は…?」
    「同じ星奏学園の普通科なこととか」
    「…君はクラスメイト達全員と運命を感じてるのか?」
    「同じヴァイオリン奏者なこととか」
    「世の中に、どれだけのヴァイオリン奏者がいると思ってるんだ」
    「同じ秋山先生に師事してることとか」
    「…世の中は狭いからな、そういうこともあるんじゃないか」
    「……あの日、合格発表の日、私の隣にマフラーをした朔夜がいて、私が鼻を拭いちゃったこととか」
    「……それがこの腐れ縁の始まりだったな」
    「…腐れ縁」
    「……まぁ、これから先も君と一緒にいることがあるのなら……それを、運命と呼ぶのかもな」

    「…っする絶対運命にする」



    運命にする、だなんて

    とてつもなく大層なことを簡単に言ってのけて、笑ってみせる運命論者


    彼女ならきっと、運命にしてしまうのだろう

    それも悪くないかもしれない


    けれど、

    今はまだ、足掻いていたいのだと、確率論者


    たくさんの奇跡のような確率の『偶然』が重なり

    運命になり得ることを、その身をもって知るのはいつの日か







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