ランディが側にいるせいで小柄に見られがちなロイドの話「なあ、兄ちゃん。今日は他のやつらは一緒じゃないのか?」
休日なのに街の見回りをしていたロイドに、そう声をかけてきたのは、いつもは西通りで元気に走り回っているリュウだった。その後ろからアンリも顔を覗かせている。
「今日は休みなんだ。だから別々に行動してるんだけど、もしかして俺以外の誰かに用事だったのかな?」
「それでいつもと違う服を着てるのか。最初てっきり別の人かと思ったぜ。……その格好だとますます警察官に見えない――」
「あ、ちょっと、リュウ! すみません、ロイドさんっ。リュウが失礼なことをっ」
「あ、ああ、いや。……ランディにも笑われたし、もう少し大人っぽい服の方が良いのかな」
休日ということもあってさすがにいつもの格好ではなく、ジーパンにTシャツ、その上からパーカーを羽織りスニーカーを履いたロイドは、どこからどう見ても青年というより少年で。支援課ビルを出る直前、昨夜は遅くまで飲んでいたのかようやく起きてきたランディにも盛大に笑われたのだ。
そのため内心少し落ち込み、このあと百貨店に行こうと決心しながら、それで用件は何だったんだ? とロイドが聞けば、背の高い兄ちゃんにアレを取って欲しかったんだ、という答えが返ってくる。
なのでアレ? と指差す方を見れば、リュウのものと思われる帽子が木の枝に引っかかって揺れているのが目に入った。
「あれは君の帽子か?」
「そうだよ。放り投げてキャッチする遊びをしてたら引っかかっちゃったんだ」
「ええと、その、ごめんなさい……」
「別に謝らなくていい。けどここは車も通るからな。前が見えなくなるような遊びは止めた方が良いぞ?」
「…………はぁい」
注意されたためかぶすっとしたリュウを苦笑しながら見たロイドは、あれくらいなら俺でもとれそうかな、と独りごちる。
するとそれを聞いたリュウもアンリも、え、兄ちゃんが? と言いながらロイドを見る。
「兄ちゃん、そんなに背は高くないだろ?」
「いや、これでも身長は175リジュあるんだが」
「え、そうなんですか? もっと低いかと思って、あっ」
「いや、まあ良いんだけど。……きっとランディが側にいるせいでそう見えるんだな。今度からちょっと距離を置こうか」
そして言われた言葉にとうとうため息をついたロイドは、よっと、と言いながら少しだけ跳躍し、帽子を取ってリュウに渡すと、気をつけて遊ぶんだぞ、と声をかけて百貨店の方へと向かい。あれこれと服を物色したものの、どういう服を着れば年相応に見えるのかよくわからずに手ぶらで帰り、ランディに助言を求めたのだが、お前はそのままで良いんじゃねえか? 良く似合ってるぜ、それ、と言われてしまったため、むうっと膨れっ面を作る事になり。
その後数日、その腹いせに加えて側に立たれると小柄に見えてしまうという理由でランディから少し距離を置き続けたが、何で避けるんだよ、寂しいじゃねえか、ロイド~っ、とランディが泣きついてきたため、色々諦めざるを得なくなり、はあ、と大きなため息をついたのだった。