アイス 隣から柔らかく笑う声が聞こえた。ちらりと視線をやると、通話する隠岐の姿が視界に入った。容姿に恵まれた彼は、無人の通路をただ歩くだけでも様になる。
「マリオは? 分かった、十分くらいで戻るわ。ほな後で」
終話ボタンを押してスマートフォンをポケットにしまう。人のよさそうな垂れ目が水上に向いた。
「マリオはバニラ、海は期間限定か新作、イコさんはなんでもええらしいです」
「なんでもええっていうんが一番困るやん」
ぼやきながら辿り着いたのはボーダー基地本部内に設置されたコンビニだった。三百六十五日二十四時間稼働する施設の要と言っても過言ではない。食堂は営業時間が決まっているがコンビニはいつでも開いているので、それに助けられている隊員は多いはずだ。水上もその一人である。
1968